水回りの汚れが気になってきた、子供が独立して部屋が余っている……。暮らしづらさを感じたら、住まいを見直すサイン。住宅診断士の柴尾竜也さんに、満足度の高いリフォームのポイントを聞いた。
この先誰が、どうやって我が家で暮らすのかを
明確にイメージするのが第一歩


柴尾竜也●しばお・たつや
ホームインスペクター、一級建築士。住宅の劣化状況などを診断し、メンテナンスすべき部分や時期、おおよその費用などを中立の立場から助言する専門家。

 

築20年の節目は、改築や建て替えのタイミング。しばしば耳にする言葉だが、「住まいの耐用年数が20年という考えは、現在の住宅性能を反映していません。建設技術や材料は目覚ましく進化しています。築20年余りの住まいなら、ポイントを押さえたリフォームを行えば、快適かつ、安全に住み続けることは十分に可能です」と柴尾さんは話す。

「現在50代、60代の方が建てた家なら、住宅性能は親世帯の時代から次第に向上しています。実際、私たちがインスペクション(診断)した住宅には築年数が経過した住まいでも骨組みがしっかりしており、『まだまだ使えるな』という家がたくさんありました。古くなったら即、建て替え、という住まい観を転換し、リフォームして今ある家を生かす方法も考えてほしいですね」

可能性を広げる
課題解決型リフォーム

事実、住宅リフォーム市場は増加傾向にある。2013年のリフォーム金額は6兆1000億円(前年比112%)を記録した(※)

「リフォームの一番強い動機は、家族が今、直面している課題の解決です。代表的な例として、古くなったり、故障した住宅設備の交換が挙げられます。その一方で、住み慣れた我が家の質を高めたい、省エネで安心・安全な場所にしたいというニーズもある。それらを叶えるには、リフォームを単なる設備交換にとどめず、家全体を見直すチャンスにするといいですね。例えばキッチンを交換するなら、思い切ってLDK全体の刷新を考えてみる。汚れてきた壁紙を替える際に、耐震性に不安があれば耐震診断を受け、必要に応じてリフォームと一緒に補強工事まで行う。このように一つの工事に合わせて、関連したリフォームをまとめて実施することで、手間を一本化でき、全体的なコストダウンも期待できます」

結婚や出産、退職といったライフイベントも、住まいを考える契機になる。現在50代の世代なら、20代、30代で子育てを前提にした住まいを購入していることが多い。子供が独立した後も、今まで同様に我が家で暮らし続けるとしたら、居住人数と住まいのサイズとのギャップ解消は必須だろう。

「お子さんが結婚して現在は同居していないケースであれば、子供が使っていた空間をどうするかは考えるべき課題です。その解決策は、単に今の家を小さく作り替えるだけではありません」と柴尾さん。

「自分たちの住まう場所とは別に、いずれ子世帯と暮らす時期に備え、二世帯同居用の居住スペースを作っておくこともできます。こうしておけば、同居が決まるまでは余ったスペースを賃貸住宅として貸し出し、年金に代わる定期収入源として使うことも。さまざまな暮らしの課題を解決すべく、リフォームは多様化しているのです」

(※)公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター集計「住宅リフォームの市場規模2013年版」