◎「サーバント・リーダー」はこう行動した!

2005年、業績不振で産業再生法の適用と産業再生機構の支援を受けていたダイエーの社長に就任し、経営再建に取り組んだ樋口泰行氏の事例である。なお樋口氏は現在、日本マイクロソフト社長を務めている。

スーパーにとって生鮮品は生命線であり、新鮮な野菜は店の顔である。ここが負けていたら消費者はついてこない。ただ、過去のリーダーも野菜の鮮度の悪さはわかっていたが、改善を命じても責任のなすり合いが始まり、改善が行われずにいた。

そこで樋口氏は全部署から本気で野菜の鮮度改善に取り組みたいと思うメンバーを集め、社長直轄プロジェクトとして野菜鮮度向上プロジェクトチームを発足させた。

トップダウン経営が行われていたダイエーでは、従業員が自由に意見を言えない文化があった。これを打ち破るために樋口氏はすべてのミーティングに参加し、年齢や役職、性別に関係なくダイエーをよくしようとする意見を言わせるようにした。そうしなければ、ベテランや職位の高い人間しか発言できないからである。何か言いたいことはありそうだが何も言えずにいるメンバーには、指名して話をさせるようにした。

意見を言いやすい環境をつくる「サーバント・リーダー」

長年の社内体質は簡単には変わらなかったが、根気強く取り組んだ結果、徐々にチームワークが発揮されるようになり、最終的に「野菜の鮮度宣言」を大々的に発表できるまでになり、顧客からの信頼を回復した。

閉鎖店舗については自分がほぼすべて回り、閉鎖理由の説明と働いてくれたお礼を従業員に直接伝えていった。店舗ではなじられることもあったが、涙を流して喜んだ従業員もいたという。

その後、閉鎖店舗から継続店舗に配置転換になった従業員が「店が赤字になってはダメだ、みんなで頑張ろう」と言って回ったことなどもあり、現場のモチベーションが高まり、それが業績を改善する力となっていった。

樋口氏はプロジェクトチームという「コミュニティづくり」をして、サーバント・リーダーシップを発揮したのである。