対照的に支配型リーダーは自分がすべての決定を下し、メンバーの意見は聞かず、配慮もしない。それでもうまくいったリーダーがたくさんいたのは、1人の優秀な人間の能力があれば成功できる右肩上がりの社会環境だったからである。

しかし今の日本のようにマーケットが成熟化すると、一人ひとりが知恵を絞り工夫をしないとたちゆかない。全員が知恵を絞り工夫するには、個々の従業員が仕事にコミットしている必要がある。しかし支配型リーダーは従業員への配慮を十分に行わないので、コミットメントを引き出せない。最低限の仕事はしてくれるかもしれないが、大きな成功を収めることは難しい。

アメリカ空軍で実践している理由とは

サーバント・リーダーシップを経営に取り入れ成功している事例として知られるのが、米国のサウスウエスト航空である。顧客満足度1位、フォーチュン誌「働きがいのある企業」ランキングの1位に輝いたこともある素晴らしい経営をしている同社では、この理論を企業文化として浸透させてきた。

意外なところではアメリカ空軍も実践組織である。いざ戦闘になったとき、兵士は上官に対する信頼がなければ怖くて戦えない。上官が部下の人間性を無視して酷く扱うと恨まれ、戦場で後ろから撃たれる危険すらある。お互い命がかかっているため両者の信頼関係構築は必須で、平時から上官はサーバント・リーダーであらねばならぬという文化を醸成しているのだ。

日本でも実践している経営者がいる。たとえばDeNAの南場智子取締役ファウンダーは、モバゲーの企画があがってきたときに最終的に部下を信じて任せた結果、事業の柱の1つになるまでに成長し、DeNAは飛躍を遂げた。

この理論を実践すれば、人の力をフルに活かすことができる。継続的に組織を繁栄させたいのなら、この理論が欠かせないのである。

(構成=宮内健)
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