グループの海外事業戦略

先日公表した2014年度の決算では、海外での売り上げが約3000億円まで伸び、利益も現中期経営計画の目標を前倒しで達成した。今後も規律ある投資を迅速に行っていくため、この7月から、海外保険事業のM&Aなどに多くの知見を持つ外国人弁護士を新たに執行役員として迎える。世界の動きに遅れることの無いよう、海外事業全体の加速を図る予定だ。

また、今年3月にはフランスの保険会社スコールへの出資を決めた。同社は世界第5位の生命再保険会社で、当社は合計約1100億円規模を投じ、持分法適用会社とする予定だ。生保再保険の分野は安定性があり、私どもグループへの利益貢献だけではなく、事業ポートフォリオに新しい柱が加わることによって、収益源やリスク分散が図れる。おそらく、来年度以降は100億円程度の利益貢献が見込めるはずだ。

アジアに目を転じると、リテール分野、すなわちマレーシアやインドネシア、ミャンマーなどの新興国が損害保険の成長市場だという認識は今後も変わらない。ただし、アジアだけでは、ボトムラインを引き上げていくのは難しく、そこをしっかりと見定めながら、16年度を初年度とする次期中期経営計画を立案していく必要がある。

損保については日本国内が最大のマーケットになるわけだが、将来に向かって毎年2桁成長などということはありえない。当社は2014年7月に中国で自動車整備事業に参入しているが、グループの海外事業戦略では、「安心」「安全」「健康」に資する高品質なサービスの提供を目的として、国内の事業展開を通じて蓄積したノウハウ、経験、現場力、これらを持つ人材、そしてシステム力、すなわち「コアコンピタンス」をフルに活用していく。次期中期経営計画の策定を進めているまさにいま、SOMPOホールディングスが世界を舞台にサービス産業を展開していくための基盤づくりを急いでいるところだ。

櫻田謙悟(さくらだ・けんご)
1956年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、安田火災海上保険入社。2010年に損害保険ジャパン社長に就任、2014年9月より損保ジャパン日本興亜会長。12年より日本興亜損保との持ち株会社NKSJホールディングス(現・損保ジャパン日本興亜ホールディングス)社長を兼任。
(構成=岡村繁雄 撮影=市来朋久)
【関連記事】
なぜビッグデータで顧客満足度が高まるのか
なぜ「テーマパーク型ビジネスモデル」を目指すのか
なぜ「損保頭」「生保頭」はいらないのか
なぜ国内最大の損保会社を支えるのが「課長」なのか
改革で恐れない「毀言日至」 -損害保険ジャパン社長 櫻田謙悟【1】