2015年6月19日(金)

欧風カレーには日本人の憧れの味が詰まっている

dancyu 2013年6月号

文・水野仁輔(東京カリ~番長) 撮影・三木麻奈

欧風カレーの話をしよう。

誰もが好きなはずなのに今まで深く言及されてこなかったこのカレーについて。身近でありながら、実は得体の知れないこのカレーについて。

欧風カレーは好きですか? そう聞かれて「嫌い」と答える人はあまりいないだろう。2012年に全国1万3000人以上を対象に行なわれた「好きなカレーのタイプ」に関するネット調査によれば、堂々の第1位が欧風カレーである。2位が家のカレー、3位がおふくろのカレー、4位以下にインドカレー、ドライカレーが続く。

では、欧風カレーとはなんですか? きっと多くの人が言葉を詰まらせることだろう。“欧風”と言うくらいだから、ヨーロッパに本家がありそうなものだが、残念ながら欧州に欧風カレーは存在しない。ヨーロピアンカレーなどと無理やり英語にしてみてもどうもしっくりこない。なぜなら欧風カレーとは、日本人の日本人による日本人のためのカレーだからである。

日本のカレーは、憧れの洋食メニューの1つとしてイギリスから伝わった。1872(明治5)年に出版された『西洋料理指南』『西洋料理通』にはすでにカレーのレシピが記載されている。日本全国へ広めたのは、外国客船に乗務したコックだとも海軍に勤務した隊員だとも言われているが、いずれにしてもその味わいは素朴で、小麦粉とカレー粉をバターでさっと炒めてつくる簡易なものだった。

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水野 仁輔