もちろん社長の中には現状のシステムの問題点を認める者もいることでしょう。しかし、ライバルが煙たがられることには変わりありません。まず、新しいことは、それがどれほど的確で効率的であろうと、導入にリスクとコストが付き物ですし、従来のシステムにより何らかの利益を得ていた層は変革を嫌がるからです。なにより、そんな大掛かりなことをするのは面倒臭いです。面倒臭いから絶対やりたくないけど、言ってること自体は正しくて否定できない。上司から見ればすごく嫌な部下でブチ殺したいと思うことでしょう。

なお、社長が間違って乗り気にならないよう、「**さんの言ってることは正しいけど、現実には~」などとマイナス面を過度に強調して水を差しておくことをお忘れなく。同時に、ライバルに直接ハッパをかけて尻を押すのもいいでしょう。「おまえこそ新しい時代に必要とされているリーダーだ!」「腐りきったこのシステムを突き崩せるのはおまえしかいない!」などと調子のいいことを言って囃し立てましょう。ライバルがその気になって本当に社内改革に動き出せばもう勝ったようなものです。会社も社長もそのような新しい変革など誰も望んでいないからです。

さらにライバルの失脚を盤石なものとするため、彼に以下のような内容が書かれているビジネス系の自己啓発本を勧めるのもいいでしょう。ある自己啓発本には「社内の人と飲みにいったりするな」などというアドバイスが書かれています。社内の人と酒を飲んでも世界は広がらず、同じメンツでは新しく得られる知識もない、自分が勉強する時間を浪費するだけであり、そんなのは全く無駄な行為であると、そのような理屈です。

確かにこれはチームワークを要せず、個人主義的で、結果がすべてという職場であれば的を射た助言であり、一面の真理ではあるでしょうが、しかし、ケース・バイ・ケースでもあります。時と場合によっては関係性維持や同僚のメンタルチェックなどのために身内飲みも必要となるでしょうし、何よりそれでは人間味というものがありません。このような自己啓発本を鵜呑みにし、実践するようなライバルであれば自然と評価を落としていくことでしょう。

作家 架神恭介
1980年生まれ。広島県出身。早稲田大学第一文学部卒。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で小説家デビュー。『完全覇道マニュアルはじめてのマキャベリズム』『よいこの君主論』など著書多数。
(撮影=村上庄吾)
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