経営トップでも、ビジネスリーダーでも、金銭感覚を磨くことは自身の成長と周囲の活性化に重要です。まして最近まではデフレの時代といわれ、売り上げも給与も増えないなかでは特に必要だったはずです。それは景気が多少上向いたとしても変わりません。

金銭感覚の大切さを教えるのに、私は京セラの幹部にしばしば「夜なきうどんの屋台」の話をしました。会社の幹部に5万円の元手を渡したとして、「しばらく会社に出てこなくてよろしい。屋台一式を貸すから、1カ月毎晩、京都のどこかでうどんを売ること。この5万円をひと月後、いくらにして戻ってくるかが実績だ」という実地訓練をさせるという話です。

実際にこのような訓練をしたわけではありませんが、このときの稼ぎに差をつけるのが、その人の経営感覚にほかなりません。麺やだし、具をどうやって揃えるかで、その人の経営感覚がわかります。それによって、売るうどんの味も値段も変わりますし、儲けも違ってきます。どちらが正解かというのではありません。お金というものは、TPOで使い方が異なるのです。

稲盛式OJTで経営感覚を育む

表を拡大
リーダーは誇り高きケチであれ!(写真=PIXTA)

例えば私は、海外出張先で街中を歩く際に買い物もします。中国の大連に行ったとき、露店で焼き栗を売っていました。たしか、日本円にして1袋30円くらいだったでしょうか。私は何度か値切りの交渉をしたのですが、最終的に「高いので買わない」と、その場を立ち去りました。

一緒についてきた人たちは少し驚いていましたが、何もお金を惜しんでそうしたわけではありません。中国の道端で物を売っている店では、値切られるのを承知で値付けしている。ですから、言い値で買っていたらむしろ馬鹿にされます。そんなことを教えたいという気持ちもありました。

いわばOJTです。盛和塾などの会合で昼食に仕出し弁当が出ることがあると、私は、参加している経営者に「この弁当の原価が大体わかる人はいますか?」と質問してみます。すると、ほとんどの人がわからない。細かいことのようですが、そうした感覚がないと、経営の現場でも丼勘定になりかねないわけです。

半面で私は、京セラの創業者として相応の株式を保有していますので、それで稲盛財団を設立して、京都賞という国際的な顕彰活動をしたり、大学や個人に研究助成を行ってきました。あるいは、地域貢献事業として、国内外の多くの施設へ寄付もしています。これは私自身も京セラも、世の中に育ててもらったことへの恩返しでもあります。

稲盛和夫
1932年、鹿児島市に生まれる。55年京都の碍子メーカーである松風工業に就職。59年4月、知人より出資を得て、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立し、現在名誉会長。第二電電企画、KDDIの設立、JALの再建にも携わる。
(岡村繁雄=構成 PIXTA=写真)
【関連記事】
経営者は仕事の目標をどこに置くべきか
稲盛和夫の金言集【1】
隠れた「コスト」をあぶり出す方法
武士の財布vsユダヤの財布vs華僑の財布、対決【1】
原価管理 -低成長時代における利益アップの近道