この夏は、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)問題による金融市場の混乱から、世界同時株安や急激な円高が経済界を襲った。

私の事務所に勤めているFX取引に詳しい税理士がいうには、「ポンド/円相場が短期間に30円も下落したことから、もしタイムマシンに乗って7月20日に戻れるならば、たったひと月で、10万円の元手がなんと5億円になるという、『サマージャンボ宝くじ状態』だったのです!」とのことだ。なるほど、巨額のFX取引の利益所得隠しで、主婦が逮捕されるほどの問題が出るわけである。

急激な円高は、輸出大国である日本の主要企業にとって、業績面で非常にマイナスとなる。輸出による収益の比率が高い企業では、次の2つの面で業績の足が引っ張られるからだ。

第1に、同じ製品を購入するのに、日本から買うよりもほかから買うほうが割安になる。米国で日本製の乗用車を買おうとしたとき、日本での販売価格が240万円、為替相場が1ドル120円だったと仮定しよう。米国の需要者がこの車を買うためには、240万円÷120円=2万ドルを支払うことになる。しかし、同じ車を1ドル100円の為替相場のときに買おうとすると、240万円÷100円=2万4000ドルになり、より多くの支払いが発生するのだ。

為替相場が変化することにより、円建ての価格が同じでも、外貨ベースでの購入価格が大きく変わってしまう。値段が大幅に上昇すれば、日本から車を買おうという意欲は当然減退する。価格競争力の点から、日本からの輸出売上高が少なくなるのは、明らかである。

第2に、外貨ベースで保有している預金や売掛金などの「外貨建て資産」の目減りがある。

図にもあるように、9月10日時点で100万ドル相当の製品を海外向けに輸出し、代金は1カ月後の10月10日に受け取るという、「100万ドルの売掛金」が発生したとする。9月10日時点での為替相場を1ドル120円と仮定すると、9月10日における輸出売上高と売掛金の評価額は、「100万ドル×120円=1億2000万円」となる。

次に、この会社の決算日が9月30日だったとして、決算日における為替相場が、「輸出時よりも5円の円高」という状態になった場合、バランスシート上では、ここで決算日(9月30日)時点での売上債権(売掛金)の評価を、どのように行えばよいであろうか。もし、決算日の為替相場で売掛金を評価すると、「100万ドル×115円=1億1500万円」となり、売上債権が取引発生時より500万円も低い評価額になってしまう。

売上債権は、売掛金・受取手形ともに現金化が他の資産(在庫、設備)よりも早いため、図のように現金預金のすぐ下に記載される。問題となるのは、このときの評価額を、「債権発生時の一ドル120円」、あるいは「決算日の1ドル115円」で計算するべきか、だ。結論からいえば、「外貨建取引等会計処理基準」に従い、「決算日の為替相場で換算」するのが原則である。この場合は、「取引発生時の売上債権1億2000万円が、決算日までの20日間で、為替相場の変動により500万円も評価額が目減りしてしまった」と考えることになる。けっきょく、外貨建ての売上債権も、「決算日で換金したらいくらになるか?」といった時価評価の思考で、決算日における為替相場での評価が必要になるのである。

このように、輸出を手広く行っている企業の売上債権は、円高基調のときには、大きく資産価値を目減りさせている可能性が高いので決算書を分析するときには注意が必要である。