W杯開催地見直し論も浮上

もっとも、FIFAの権力闘争は複雑である。英国などの欧州勢が「反ブラッター」を声高に叫んでも、北中米カリブや南米勢、アフリカ勢、アジア勢の支援を受けたブラッター会長が一度は続投を決めたのだった。アメリカ司法省の摘発があっても、多くの協会が投票行動を変えなかった。

普通であれば体制の刷新となるのだろうが、FIFAの政治力学はそう単純ではない。欧州勢などサッカー界の先進国の「常識」と、アジア、アフリカ勢などの途上国の「常識」が違っているのかもしれない。

ついでにいえば、ブラッター支持派といわれている日本サッカー協会の大仁邦弥会長はブラッター会長に投票したかどうかを公言していない。なぜ隠すのか。日本はもっと明確に意志を示すべきである。将来のW杯招致に向け、もっと政治力を備えるべきである。

今後のポイントはまず、次期会長にだれがなるのかである。さらに司法当局の摘発がどこまで拡大するのか。ブラッター会長にまで逮捕が及ぶのか、米国内のスポーツ用品メーカーまで捜査が入るのかだろう。

2018年、22年のW杯の開催地の見直し論も浮上している。

いずれにしろ、FIFAは改革が求められている。組織の透明化とガバナンス、コンプライアンスの強化を進めなければならない。信頼できる第三者委員会による検証、再発防止策の策定、体制の刷新……。これを機に周囲からの信頼を回復することができるのか。当分、目が離せない。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。