「小麦(グルテン)を食べると脳内炎症」

なぜ、グルテンがそこまで人体にとって悪いものなのか。

前出のジョコビッチ本では、巻末で、アンチエイジングや長寿の研究の第一人者である順天堂大学の白澤卓二教授に解説していただいた。一部を引用しよう。

「グルテンが体内に入ると、小腸・大腸を含む腸全体で吸収されます。その際にタイトジャンクション(密着結合)が開き、腸内細菌から分泌された毒素が脳に運ばれ、脳に炎症が発生します。脳の炎症のために神経細胞は十分なニューロトランスミッター(神経伝達物質)が蓄積できず、それが初動の遅れとなって現れます」

日本人を含む現代人の日常食である小麦が「人の脳機能を低下」させ、それがスポーツ選手には致命的ともいえる「遅延反応」にもつながるという。そして、錦織に対してもこう提言している。

「端的に言って、今の錦織圭選手がさらに上を目指そうとするなら、必要なのは技術や体力のトレーニングではありません。栄養・食事指導です。パンをはじめとした小麦製品を完全に絶ち、食べ物を根本的に変えなければなりません」

弱点露呈した、と敗戦直後に夕刊紙は報じた。弱点とは、ビッグサーバー(サービスの速度が速い選手)に負けることだが、食事管理も改善点なのかもしれない。

その錦織だが、「小麦」は好物のひとつのようだ。テレビや雑誌の取材に「好きな食べ物」として、おもち、雑煮、しゃぶしゃぶ、のどくろ(魚のアカムツの別名)などのほかに、「とんこつラーメン」「たらこのスパゲティ」をあげている。料理好きで知られる彼は自身のウェブサイトで、「きのこベーコンパスタ」を作っている写真をアップしていた。

さらに、今年1月の全豪オープンとほぼ同時期に現地で開催されたサッカーの日本対ヨルダン戦を観戦する錦織の姿が目撃されているが、その手元を見ると、パンかラスクと思われる小麦製の食材を口にしている。

どうやら小麦が錦織の食生活に組み込まれていることは、間違いなさそうだ。では、この食習慣は、いまだ優勝できずにいる状態と相関関係があるのだろうか。