女子高生にまちづくりの主役を任せ、まちや大人たちにさまざまな変化をもたらした「鯖江市役所JK課」(詳しくは前編参照http://president.jp/articles/-/15394)。大人たちだけでなく、プロジェクトを担ったJK(女子高生)たちにも様々な変化があったと牧野鯖江市長は話す。これからの地方創生は、若者、特に若い女性が住みたくなるまちづくりがカギだと話す牧野市長に、鯖江市の今後の挑戦について聞いた。

JKたちの変化と「広がり」

【牧野】JK課で活動するようになり、女子高生たちも変わりました。それまで他人事だったまちのことを自分事として捉えてくれていたと感じます。彼女たちは1年間で50回以上もミーティングを開き、いろんなアイデアを出して、実現させていきました。

第二期スタート記者会見の様子

【若新】しかも、彼女たちは誰かにそれを命令されたわけじゃありません。給料はもらえないし、学校からの推薦もない。JK課では、「まちづくりについて市長の話を聞いて勉強しましょう」なんていうのも一回もないですから。彼女たちには、大人を巻き込んで自由に活動できる「JK課」という場所があっただけ。楽しいから、やる。そこでの体験が彼女たちを変えた。これがとても重要なことだと思います。

【牧野】そう思います。例えば、JK課の発足直後に取り組んだ、図書館の空席状況アプリ「Sabota」での経験などが大きかったと思います。地元のプログラマーや企業と組み、図書館のサービスをより便利に利用してもらうためのアプリをつくりましたが、あれによって「大人が自分たちの意見にちゃんと耳を傾けてくれる」ことを感じ取ってもらえたのではないでしょうか。自分たちが動けばまちも大人も変わる。そう身をもって感じたことで、彼女たちの意識も変わっていったのだと思います。

最近は、JK課の活動が周りにもいい影響を与え始めているのを感じます。先日、市内のイベントで、中学3年生の女の子が私のところにやってきました。聞けば、以前、JK課の活動を取材しに来てくれたことがあるそうです。そしてこう言うんです。「私、高校生になったらJK課に入ります。だから市長さん、頑張ってください」。その言葉を聞いて感動しました。こんな広がりはなかなかありません。

【若新】今、地域に必要なのは、まさに市長がおっしゃった「広がり」だと思います。従来の日本の社会は、稼いで、増やして、その結果「上がる」ことを求めていたのだと思います。例えば、仕事が増えてお金を稼ぎ、便利な家電を揃え、新しくできた映画館や商業施設で消費を楽しむ。しかし、今は地方に済む未成年であっても、手元の携帯でどんな情報も入手できるし、安く気軽にネットで買い物もできます。無理して上を見る必要がありません。

それよりも、「あの人が協力してくれた」とか、「こんなことも実現できた」という新たな体験や、広がりを求めています。それによって「このまちは新しい体験ができる、なんか楽しい」と感じることが、まちの魅力につながっていくのだと思います。