スゴいと思うが、よくわからない日本人

それに比べると、日本人に関する話題は比較的盛り上がりをみせる。

小泉元首相が、首相在任中の2006年1月にトルコを訪問し、エルドアン首相(当時)との会談後にイスタンブールのブルーモスクを訪れて礼拝したことがある。

このとき、小泉氏は作法どおりに正座して、行儀よくイマームの話に耳を傾けた。写真入りでその様子を報じた現地のメディアは、彼のことを「とても感じのいい首相」と形容した。

そのことをいまだに覚えているオヤジもいて、たとえば表通りを日本人ビジネスマンが通り過ぎると、その後姿を指さしながら、会話が始まるのだ。

「あいつらの日本って国はおもしろいよな。コイズミって首相が来てさ、モスクで正座してイマームの話、聞いてたぞ」

「うむ、あいつらは、なかなか礼儀正しい!」

という具合だ。どの国に行っても、礼儀正しさは日本人の代名詞のようなものだ。

ただしその一方で、アラブ地域でよく耳にするのが、「日本という国はたしかにすごいけど、日本人というのはよくわからん」という評判。

つまり、自分の考え方をストレートに、相手にわかるようにしゃべることができる日本人が極めて少ないということだ。

アラブ人の多くは、「AはBだからCでしょ!」という話し方をするのだが、日本人は、「AはBなんですけどねえ……Cの可能性については今の段階ではなんとも判断できませんね」という話し方をする。

いい悪いは別にして、これは日本人の男性にも女性にも、そして政治家にもビジネスマンにも共通していえる特性である。

「よくわからん」という評価は、現地に赴任している日本人ビジネスマンの行動半径の狭さにも起因していると思う。

イスラム圏の多くの国々には、日本人駐在員が居住する地域、すなわち「日本人村」がある。総じて各国の一等地だ。行動に制限がある女性はもちろん、男性も、ビジネスに必要な場面を除いてはこの村から出ようとせず、3~4年で帰国してしまう。

つまり、日本の一流企業の看板は背負っているものの、「個人」としての顔が見えないのである。その結果、「あいつら、ちょこちょこ歩いていて、全然すごくないんだけど、日本って国はすごいよな」という評価になるわけだ。

※本連載は書籍『面と向かっては聞きにくい イスラム教徒への99の大疑問』(佐々木 良昭 著)からの抜粋です。

佐々木 良昭ささき・よしあき)●笹川平和財団特別研究員。日本経済団体連合会21世紀政策研究所ビジティング・アナリスト。1947年、岩手県生まれ。19歳でイスラム教に入信。拓殖大学卒業後、国立リビア大学神学部、埼玉大学大学院経済科学科を修了。トルクメニスタン・インターナショナル大学にて名誉博士号を授与。1970年の大阪万国博覧会ではアブダビ政府館の副館長を務めた。アラブ・データセンター・ベイルート駐在代表、アルカバス紙(クウェート)東京特派員、在日リビア大使館渉外担当、拓殖大学海外事情研究所教授を経て、2002年より東京財団シニアリサーチフェロー。2014年からは経団連21世紀政策研究所ビジティング・アナリストに就任。
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