今年1月に起きた仏「シャルリーエブド」襲撃事件は、フランスで生まれ育ったアルジェリア系移民の兄弟による犯行だった。国外の組織ではなく、国内出身者が過激思想に染まって引き起こすテロを「ホームグロウン・テロ」と呼ぶ。

シャルリーエブド本社前で献花するファビウス仏外相とケリー米国務長官。(時事通信フォト=写真)

これは、冒頭のように欧米に入ったイスラム移民の2世や3世が成人する過程で過激思想に染まって起きるケースが目立つが、その国のネーティブが起こすケースも同程度ある。また、テロの動機はイスラム過激派の思想によるものと、その真逆の極右・反イスラムの思想によるものに大別される。2011年のノルウェー連続テロ事件は後者の典型だった。

防衛大学校総合安全保障研究科兼国際関係学科教授の宮坂直史氏は、予防は困難だと言う。「ボストン・マラソン爆弾テロ事件で使われた圧力鍋爆弾の作製方法はネット上で公開されており、誰でも作れる。さらに、犯人はたいてい初犯かつ組織にも属しておらず監視ができない」。

では、今できるテロ対策とは。宮坂氏は「政府や警察が国民全員を監視するのは不可能。実は草の根でテロを阻止するのは学校や職場などのコミュニティだ」と指摘する。実際、日本では爆弾を作製していた人が過去10年で50件摘発されているが、多くは周囲の通報から発覚したのだという。世間の目は侮れない。

(時事通信フォト=写真)
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