ほどよい緊張感のある健康的な生活を送りながら、報酬も手にできる――。定年退職した後の「第2の仕事人生」を生き生きと充実させている人がいる。一方で、退職と同時に家にひきこもり、心身の健康も崩しがちになり、妻や子どもに疎んじられてしまう人もいる。両者の分かれ道はどこにあるのか。

通常は定年後に稼げても月3万

働く意志がある場合、どうすれば自分に適した職を見つけることができるのか。すぐに思いつくのはシルバー人材センターだろう。原則、市町村単位に置かれ、定年後世代に無理のない働き方で仕事を斡旋する。

ただし、シルバー人材センターは「生きがいを得るための就業」が目的で、ボランティアも多い。報酬は、平成23年度の統計で、年間1人42万円だそうだ。

ほかにも、60代以上の社員が要となっている民間の会社もここ数年、登場している。しかし、定年世代がすぐに再就職先を見つけることはまだまだ難しい。報酬も月10万円稼ごうと思うと、状況としてはかなり厳しいと言わざるをえない。『好きなことで70歳まで働こう!』の編著者で、サラリーマン研究の第一人者でもある西山昭彦さんは、年をとってもしっかり稼ぎたいと思う人は、今までやってきた仕事の延長上で雇用先を見つけることこそ最良、という。だからこそ、定年退職の5年前から社内外に「営業活動」をする重要性があると説く。

「現役の頃は嫌なヤツにも仕事が回ってきます。しかし、上司にゴマをすって出世したような人は、退職したら誰からも相手にされないでしょう。退職しても活躍するには、若い人たちから『あの人ならば仕事をあげたい、紹介したい』と思われる人柄であることが大前提です」

退職前の5年間は会社員人生を振り返る時間でもある。社外でも通用するスキルや経験を冷静に自己評価し、必要であれば磨きをかけるのだ。

「未経験の分野に挑戦しても若い人材に勝てるわけがありません。サラリーマンは、比較的長期にわたって担当して評価されてきたスキルや経験だけが市場価値を持つのです」

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リタイア後の働き方の4分類

西山さんによれば、定年退職後の働き方は「前職と同じ分野か別分野か」と「雇用か起業・個人事業主か」の2軸で4つに分類できる(図参照)。この中で最も無難で仕事を見つけやすいのが「前職を活用できる分野で雇用される」ことなのだ(A)。

「他人を雇って起業することはやめたほうがいい。サラリーマンは特化した能力を会社に売ってきた人たちです。起業できるならばとっくにやっているはず。今さら経営者は無理があります。せめて自宅で開業できる個人事業主になるべきです」

4つの分類の中でも「前職と別の分野で独立開業」(D)はハードルが高そうだ。では、他の3形態の成功者にそれぞれ登場してもらうことにしよう。