「市民主役」という地域ブランド

牧野百男(まきの・ひゃくお)●福井県鯖江市長。1941年生まれ、福井県出身。福井県総務部長、福井県小浜市副市長、福井県議会議員等を経て、2004年より現職。行政のICT化に注力し、オープンデータ活用によるまちづくりを促進。市民主役の新しい公共を目指し、様々な地元企業・団体等とも連携。2014年には、女子高生によるまちづくりユニット「鯖江市役所JK課」を発足する。
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【牧野】彼らが生業とするものづくりは、つねに素材との闘いです。例えばメガネのフレーム素材は、銅合金から始まってチタン、さらにマグネシウム合金へと素材開発が進んでいます。フレームのチタン加工技術は、いまやメガネの分野にとどまらず、医療機器やスマートグラスの分野にも広がっています。彼らはイノベーションと共に生きていますから、常に変えよう、より良くしようという意識は強いですよ。

【若新】伝統的な地場産業にこそ、変化やイノベーションの意識があったんですね。

【牧野】ただ今は、海外展開も含めて「どう売るか」が課題です。鯖江は優れたものづくりのまちですが、売るのが苦手です。相手先ブランドで製造するOEMや、設計から製品開発を行うODMも多く手がけていて、世界の名だたるメーカーのメガネがじつは鯖江産というケースがよくあります。漆器もそうです。鯖江でつくられたものでも、最終的にはほかの産地の作家名で世に出るため、鯖江の名前が表に出ることはほとんどありませんでした。まさに裏方でした。

最近になって、鯖江のオリジナルブランドを育成しようとする機運が高まっています。メガネで培った技術で医療機器分野に参入したシャルマンは、「メイドイン鯖江」にこだわり、鯖江にメディカルバレーをつくろうと頑張っておられます。

【若新】これからは裏方に甘んじるのではなく、自分たちから発信していこうというわけですね。JK課ではかなり多くのメディアに活動が取り上げられましたが、鯖江の地域ブランドとはどのようなものなのでしょうか?

【牧野】JK課を始める前も、鯖江市はオープンデータや市民主役事業に早くから取り組んでいて、自治体の間では少し知られた存在でした。国に先駆けて始めたオープンデータでは、これまでに約90のアプリを市民と協働で開発しました。2010年には、「自分たちのまちは自分たちでつくる」という市民主役のまちづくりを進めるため、「市民主役推進条例」を施行しています。こうした先進的な取り組みが中央官庁からも評価され、各省庁と組んだ実証実験も行っています。

ただ、未成年や女子高生を主役にするという発想は、私たちにはありませんでした。もちろん、以前から若い女性の市政への関心の薄さは感じていて、この層にどうアピールするかは課題でした。ですから、女子高生に焦点を絞った若新さんの発想は、面白いと思いましたね。若い女性の感覚や意見を大事にするまちが、最終的に失敗するはずありません。JK課に取り組んだことで、これまで市民主役事業に取り組んできたまちの認知が一気に花開いたと思います。