女子高生が“ゆるいまちづくり”を楽しむ「鯖江市役所JK課」。賛否両論が渦巻く中、初年度は20以上の企画や活動を実施して、各種メディアにも60回以上登場。第二期も新メンバーが12名加わり順調にスタートした。しかし一番の実績は、まちや大人たちに色々な「変化があった」こと。鯖江市は前例のないプロジェクトになぜ取り組み、そしてどう変わったのか。立役者である牧野百男鯖江市長を迎え、JK課1年目の舞台裏に迫った。

常識と価値観を変える

【若新】僕が福井県出身というのもあって、鯖江の市民団体によるまちづくりプランコンテストに参加したのがきっかけで、2014年の1月頃に「JK課」を提案しました(鯖江市役所JK課WEBサイト:http://sabae-jk.jp/)。

まちづくりになんて興味のなかった、「ゆるい市民」の女子高生を主役にする。前例がないだけでなく、ゴールを事前設定しないという実験的プロジェクトでしたが、企画を採用してもらえました。僕は他のプロジェクトでも、あえて詳細な出口設計をしません。当事者たちと一緒に模索しながら、変化を楽しむ。それを「いい加減だ」とか「ただの思いつきだ」といって批判する人もいますが、市長はこの意義をちゃんと理解してくださいました。

【牧野】「JK課」と聞いたときは驚きましたが、やってよかったと思います。もちろん最初は成功するかどうかわかりませんし、リスクもあります。ですが、リスクを背負うことは厭いません。初めから結果がわかることをやっても、成功することはありませんから。

いまの時代、大人の常識と社会の常識、価値観を変えていかなければ、この国がダメになるのは目に見えています。特に行政サービスはそうです。行政サービスは与えられるもので、住民はそれを受ければいい、という考え方はもう古いでしょう。限られた財源と人員のなかでは、ある程度の市民参加と協働で市民にもサービスを担っていただき、そのなかで多様なニーズに応えていくことが大切だと思います。

【若新】JK課は、「市民にオープンで、変化を受けいれるまち」という鯖江の意思を示す象徴的なモデルになったと思います。市長が変化に伴う色々なハレーションを覚悟して採用してくださったおかげです。また、鯖江市というまち自体にも、市民参加の意識が根付いていると感じました。

【牧野】おっしゃるとおりです。鯖江市は平成の大合併の際、当時の市長が隣の福井市等との合併協議を進めましたが、協議の是非を問う住民投票が2度も行われ、断念しました。その後、2年半かけてリコールを成立させたという経緯があります。住民パワーの強いまちなのです。

【若新】他は合併する流れの中で、まちが独立して生きていく決断をした。市民の市政への関心が強いまちなんですね。

【牧野】鯖江は、社長さんが多いまちでもあります。福井県は社長輩出率が高いことで有名ですが、それを支えているのは鯖江です。地場産業のメガネで520社、漆器で220社、繊維で100社あります。みな独立した事業主です。それも鯖江市民の気質に大きく影響を与えているでしょう。