消費税に一本化するのがあまりに過激だというなら、所得税と併用してもいいでしょう。その場合は現行の消費税の税率を上げて、法人税や所得税の税率を下げるのです。

日本の法人税の税率は30%ですが、地方税である法人事業税や法人住民税を加えた実効税率は40%を超えます。大手会計事務所のKPMGインターナショナルが2008年4月に発表した調査によると、日本の法人税の実効税率は40.7%で経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中、7年連続で最も高いそうです(日本に次いで高いのはアメリカで40.0%、逆に低いのはアイルランドで12.5%。平均は26.7%)。

こんなに高いと起業する意欲がなくなり、日本に進出する企業も減るかもしれませんから、せめて30%くらいに下げたらどうでしょう。しかも日本の場合、法人の7割が赤字で、法人税の支払いはゼロ。残る3割のみが法人税を支払っているわけですが、その率が世界最高水準というのは明らかに不公平です。

個人の場合を見てみると、アメリカの連邦所得税も累進課税ですが、累進の比率が低く、最高税率は28%です。日本でも以前から比べると低くなりました。いまは課税所得1800万円を超える人に対して、最高税率が適用され、その値は40%です。10%の地方税と合わせて最終的には50%となりますが、以前は70%、 そのさらに昔は90%という信じられない税率の時代もあったようです。

一方で個人の所得税率も40%は高すぎますから、せめて30%とか25%に下げるべきでしょう。

ただ、こうした消費税の一本化論を唱えると必ずこういう反論がきます。課税最低限以下の所得しかない、本来ならば税金を免除されるべき人たちにも税金を負担することになる、と。本当にそうでしょうか?

税の逆進性といいますが、これを解決するのは簡単です。支払った分の消費税を後で戻せば済むことです。たとえば年収400万円くらいに課税最低額を決め、確定申告時に該当する人に物品やサービスを購入したレシートを添付してもらい、それと引き換えに、徴収した税金を返す仕組みを作ればよいのです。もうひとつ、贅沢品以外には消費税をかけないというやり方も考えられます。イギリスがこの方式を採用しており、高級レストランでの外食は別ですが、食品などの生活必需品には消費税が課されていません。

もし消費税だけに統一すると、どのくらいの税率が必要なのか。ちょっと計算してみましょう。国と地方を合わせて年間100兆円必要だとします。一方で、国内総生産(GDP)が500兆円あり、これが消費税の原資です。その割合はどのくらいあればいいかというと、500×0.2がまさに100ですから、20%あれは済む計算になります(現在ある控除などをしないことが前提)。平成21年度の国の一般会計歳出額が88兆5480億円(当初予算)。このうち、46兆1000億円が税金でまかなわれていますから、地方を合わせてもざっとこの額で賄えるでしょう。

主要国の消費税率(大方が付加価値税)を見てみると、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーが25%で最高、おおむね10%台後半から20%台前半という国が大勢を占めています。アメリカは先ほども述べたように、州や群、市単位で変わり、たとえばニューヨーク市の小売売上税の比率は8.375%です。ただし、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどの北欧諸国は他の税金も高く、所得の半分は税金と社会保険で持っていかれます。その代わり、死ぬまできちんと面倒を看てくれるのです。

※この連載では、プレジデント社の新刊『小宮一慶の「深掘り」政経塾』(12月14日発売)のエッセンスを全8回でお届けします。

連載内容:COP15の背後に渦巻くドロドロの駆け引き/倒産に至る道:JALとダイエーの共通点/最低賃金を上げると百貨店の客が激減する/消費税「一本化」で財政と景気問題は解決する/景気が回復で「大ダメージ」を受ける日本/なぜ医療の「業界内格差」は放置されるのか/タクシー業界に「市場原理」が効かない理由/今もって「移民法」さえない日本の行く末

(撮影=小倉和徳)