民主党政権は「消費税率は4年間上げない」と言っていますが、短期的には「子ども手当」の創設、景気後退による法人税を中心とした税収の大幅落ち込み、少子高齢化の進展と増え続ける社会保障費、GDPの170%を超える中長期債務などの厳しい財政事情を考えると、何らかの税金アップは時間の問題です。

私は、なかでも消費税を上げるのが一番良いと思っています。消費税率アップというと、アレルギー反応を示す人が多いのが現実ですが、北欧並みの20%まで上げると他の税金が不要になるというお話、聞いてみたいと思いませんか。

私はかねてから「税金は消費税一本に統一すべきだ」と思っています。理由はいくつかあるのですが、まずは、そうすることで税の不公平感の払拭ができると思うからです。現行の税制下では、サラリーマンはほぼ100%、所得を捕捉されていまが、自営業者や農家には所得をきちんと申告していない人がいます。課税所得が数百万円しかないのに、ベンツを乗り回しているのは明らかにおかしい。

「お金を得た」時点に遡って税金をとるのが所得税ですが、時間を遡らなければならない上に、所得の種類がたくさんある場合は捕捉が大変難しくなります。また、さまざまな控除や優遇があります。その点、消費税は仕組みがシンプルで、「お金を使った」時点で税金を確実に徴収できるわけですから、税の公平感の確保という意味では非常に優れています。ないお金は使えないからです。

さらに所得税の不公平感を増す原因となっているのが、金額の多い人ほど、税率が増す累進課税という仕組みです。

課税所得が500万円の人は所得税率が20%ですが、1000万円になると33 %に跳ね上がります。(課税所得は収入からさまざまな控除を引いた額です)。

それぞれ規定の控除額を差し引いて計算すると、年収500万円の人の所得税は57万2500円なのに対して、年収1000万円の人はその約3 倍、176万4000円の所得税を支払わなければなりません。つまり、年収が2倍になったら3倍の税金を払わなければならないのです。これが累進課税というものです。

たとえ税率が一定であったとしても、500万円と1000万円とでは後者のほうが額が多いので、税金を多く支払うわけですが、さらに所得が上がれば上がるほど税率も上がります。所得の多い人にとっては極めて不公平な仕組みに映るはずです。稼げば稼ぐほど税金で持っていかれるのならば、働く意欲も減退するというものです。所得の多い人が、たくさん負担するのは合理的ではありますが、累進税まで貸さなければならない根拠はどこにあるのでしょうか。ある程度食べられれば、それ以上は多く支払えということだと思いますが、それなら、稼ぐ時点でとるよりも使う時点で補足する消費税のほうが公平感がより高いのではないでしょうか。

さらに所得税には控除がたくさんあって、極めて分かりにくくなっています、税制はなるべくシンプルなほうがいい。複雑にすればするほど分かりにくくなります。税制が複雑になって喜ぶのは、それを管轄する国税庁や税務署、税理士だけです。彼らの仕事や存在意義が増すからです。

その点、消費税一本にすると、店の売上げだけ、チェックしておけば、100%、税の取り逃がしを防ぐことができます。物やサービスを購入する時、消費税率分だけ値段に上乗せした金額を支払ってもらえばいいのですから、とても簡単です。店がきちんと申告するか、という問題もありますが、払い戻しを受けるお客は必ずレシートをもらいますから、査察官がそれらを借りて、レシート番号とレジ番号、それに金額が合っているか、税金を徴収したという記録がレジに打刻されているか、時々、抜き打ち検査をやればいいのです。そういう仕事を専門担当する消費税査察官を税務署に作ればいい。いまみたいに職員がいちいち帳簿を調べ、「これは交際費ですか、会議費ですか」とくだらない質問をしてくるよりずっと仕組みがシンプルでストレスもありません。