超一流まで「あと一歩」を越えるヒント

――今度は錦織についての質問です。ここ最近、錦織の実力が素人目にも上がっているのが分かります。例えば、彼が試合中に「股抜き*」(ネットに背を向けたまま脚と脚の間でボールを打つ)をやりますが、背面を向きながら相手コートに打ち返すのは、かなり難しそうです。どうやって鍛えればいいのですか?

*編集部注:一見、ファンサービスの曲芸のように見えるが、相手を幻惑するなど戦略的に有効と言われる。

【杉山】一番はハンド・アイ・コーディネーション(目と手の連動力)ですね。テニスは道具を使うスポーツですから、ボールと自分との空間を把握し、どこにボールがくるのかという判断力が求められます。股抜きをしようと思ったら、タイミングが全てになります。ボールが地面につくかつかないかスレスレのコンマ数秒の間に手首をうまく返してラケットのヘッドを利かせられるかどうかがカギとなります。手首のスナップは鍛えたほうがいいですが、どこの筋肉というよりはタイミングですね。股抜きだけを練習するというより、遊び感覚で色々なショットを試すうちにできるようになるというのが本当のところですね。

読めば肉体改造のみならず、人生も好転するという実践的ダイエット理論本『ジョコビッチの生まれ変わる食事 あなたの人生を激変させる14日間プログラム』(三五館)はベストセラー。
――前回お会いした時に、「ジョコビッチが素晴らしいのは、かつてランキング1位2位のナダルとフェデラーとの差が大きすぎて、誰も追いつけないと思っていた時もジョコビッチはずっと頂点を狙い続けていたことだ」と言っていましたね。今は、世界4位の錦織だからこそ1位のジョコビッチの凄さが見えて気圧されることもあると思うのですが?

【杉山】正直なところ、あのときほどの差はないと思います。フェデラー・ナダル時代は3番手のジョコビッチ以下との差が大きすぎて、誰もそこを狙うことすら考えられない状況でした。今のジョコビッチはもちろん世界1位で素晴らしい選手であることは間違いありませんし、今年のジョコビッチは2011年に初めてウィンブルドン優勝を果たし、世界1位に上り詰めたジョコビッチよりさらに強いです。それでも、「フェデラー・ナダルとジョコビッチ」の差と比べると、「ジョコビッチと錦織」の差は明らかに小さいです。

これは、直接対決の成績を見ればわかるのですよ。今でこそ互角に近くなっていますが、かつてのジョコビッチはフェデラーとナダルには全く歯が立たず、圧倒的な差がついていました。それに対して錦織対ジョコビッチの対戦成績は2勝3敗です。0勝10敗ではありませんから、決して圧倒的な差があるわけではないということです。

▼超一流は「食事管理」に神経を使う
――ということは、錦織にも4大大会優勝やランキング1位など頂点を極めて超一流になるチャンスもあるということですね。ところで、不動のランク1位の「絶対王者」とはいえ、ジョコビッチも今年で28歳。アスリートとしてそろそろ肉体も下り坂に入るのではないかという心配がありますが、その点はいかがですか?

【杉山】いや、まだ大丈夫ですね。食事もそうですし、トレーニング手法もそうですが、スポーツ全体が科学となり、昔よりも効率のよい時間の過ごし方がわかってきていますから、みんな緻密に動いています。だからこそ、33歳になったフェデラーが今も第一線で戦えていますし、(グルテンフリー=小麦などに含まれるタンパク質類を一切摂らない食事管理法を実施する*)ジョコビッチがまだ老け込むとは思えませんね。

*次回のテキストで、ジョコビッチの食事管理法を詳述