例えば、期待を表明するつもりで「5年後にはリーダーになってほしい」と声をかけても、30代の女性には響かない。「5年先の話をされてもねえ……。結婚するかもしれないし、子供が生まれるかもしれないのに」というのが、女性側の正直な反応だ。

「30代の女性に対しては、遠い地点に立って『こっちに来い』という声かけではなく、隣で『今できることを一緒に考えよう』という『伴走のコミュニケーション』が必要です。そこで大切なのが『傾聴』です」(前川氏)

仕事を任せるとき、20代なら「あなたの長所はここだから、この仕事をやって」で済むが、30代の場合は続けて「現実的にできそうかな?」「この仕事をやるに当たって不安なところはある?」と問いかけ、それを乗り越えるためにはどうすればいいのかを一緒に考える姿勢が必要になる。

「不安や障害があったとき、『優しい』上司は負荷を下げてしまいがちですが、これは絶対にやってはいけない。彼女の意識の中では、『キャリアダウン』になるからです。彼女の成長を期待するのなら、プロセスと時間的裁量は任せて、打開策を自分で考えさせるよう支援することが大切です」(前川氏)

そこで「女心」をくすぐるのが、「いつでも相談に乗るよ」「よくやっているね」というひと言だと秋田氏は言う。

「チャレンジは孤独なものですが、女性は『見守られている』という安心感が欲しいもの。『よくやっているね』という励ましの言葉には、『自分は手を貸してやれないけれど、あなたの頑張りを応援しているよ』という優しさを感じます。男性マネジャーの口癖にしてほしい言葉ですね」(秋田氏)

前川 孝雄(まえかわ・たかお)
FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師
管理職研修や風土改革で企業のダイバーシティ推進を支援。『女性の部下の活かし方』(メディアファクトリー)など著書多数。

 

秋田 稲美(あきた・いねみ)
ドリームマップ普及協会代表理事
女性向けの目標達成ツール「ドリームマップR」を考案し女性活躍コンサルティングを展開。『女心をつかむ魔法のことば』(大和出版)など著書多数。

(遠藤素子=撮影)
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