その代表的な兆候が貧血である。がんは他の細胞に比べて酸素や栄養素を多く必要としているので血管新生と呼ばれる新しい血管をつくるが、この血管はもろく弱いので、ちょっとした刺激でも出血しやすい。胃がん、大腸がん、子宮がん、膀胱がんなどがこのケース。がんの種類によっては出血を伴わないものもあるので、貧血のタイプも異なるが、いずれの場合も男性なら、ヘモグロビン値(一般的基準値:13~16g/dl)が、11g/dl未満に下がれば要注意。もともと貧血気味の場合は、この限りではないが、がんが原因の貧血は、短期間の間にヘモグロビン値が減少するので、定期的に数値の動向を確認したい。

急な体重の減少もそうだ。がん細胞が生じると食欲が落ちるだけでなく、がんによってエネルギーの消費量が増えるので、普段通りの生活をしていても体重が減り続けるのだ。2~3カ月の間に体重が20%以上減ることがあれば、胃がんや大腸がん、食道がんなどの可能性がある。

また、便の色にも変化が表れる。色が黒いと胃がんや食道がん、白っぽいと胆管がん。大腸がんや直腸がんなら血が混じることもある。

がんの検診に腫瘍マーカーの検査があるが、これは進行がんの治療効果を判定するもので、前立腺がんなど一部のがんを除き、早期のがんを見つけることは難しい。PET検査も頭頚部がん、食道がん、肺がん、大腸がんなどでは威力を発揮するが、肝臓がんや胃がんなどは苦手とするなど、すべてのがんに有効とはいえない。

がんは全身に発生し、その種類も多様なので他の病気のようにピンポイントで見つけるのは難しい。もし健康診断で疑わしい兆候があれば、可能性が考えられるがんのがん検診を受けることが大切。

「とくにがんの家系では、定期的な検診を受けるようにしましょう」(工藤医師)