遺産トラブルは、回避できるのか

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遺産トラブルは年々増えている 裁判所に持ち込まれる遺産関係の相談は年々増加。高齢化、親戚関係の疎遠などにより、今後もっと増加すると想定される。

遺産を巡るトラブルは、遺産額の多寡にかかわらず、年々増えている。今後も晩婚化の影響でますます子どものいない家庭が増えること、高齢化に伴い、認知症の高齢者が増えることなどから、さらに身近な悩みになるはずだ。

では、将来的に相続トラブルを回避する方法はあるのだろうか? 吉澤税務会計事務所代表で税理士の吉澤大氏は「結論から言うと、難しい」という。「トラブルを回避するには遺言書を書いてもらうのが一番ですが、ハードルは意外に高い。本人が自分の死を意識する作業なので気が乗らず、後手に回るケースがほとんどなのです」(吉澤税理士)

また、野澤弁護士は「仮に、遺言書が存在したとしても、遺言書の効力は絶対とは言えない」という。

「遺言書に不服がある相続人は、被相続人(財産等を残して亡くなった人)が相続人に最低限残さなくてはいけない遺産である『遺留分』の権利を主張できるし、遺言書が誰かに書かされた形跡があったり、明らかに相続が不公平なものだったら不服を申し入れ、新たに相続人同士で合意書を作ることもできます」(野澤弁護士)

つまり、絶対的に相続トラブルを回避する方法はないのだ。

とはいえ、親の資産を第三者に横領される、あるいは被相続人の突然死により財産がどこにあるのかわからないといったリスクを軽減する方法はある。それは被相続人の「財産目録」を作っておくことだ。

「預貯金や株券など金融資産はどこの金融機関にあり、保険はこれだけ入っているといった一覧だけで、資産がどこにあるか把握できないという事態を回避できます」(吉澤税理士)

ただし、これを詳細に作ったまま無防備に自宅に保管しておくと、余計なトラブルの火種となる可能性もある。「親や息子などが詳しい財産の額を知ってしまうと、その金をあてにする。隠したり、暗号にするほうが無難です」(野澤弁護士)。そこで野澤弁護士が推奨するのが、「利害関係のない友人に目録を託す、あるいはヒントになるようなコメントを残すこと。いざというとき家族に伝えてもらえば、それをヒントに相続人が資産を探すことができます」。

誰だって、交通事故など「突然死」のリスクがないとはいえない。よって、まずは自分の財産目録を作っておくこと。それが、せめてわが子や妻を相続トラブルに巻き込ませない第一歩かもしれない。