ISをリビアに“向かわせている”国が存在する?

シリアとイラクで役割を終えたISは、この地域から出ていく。出口は入ってきたときと同じく、トルコだろう。しかし、トルコの南東部はほとんどの住民がクルド人であることから、トルコに入った瞬間、クルド人との戦闘を覚悟しなければなるまい。南東部以外の地域も同様だから、トルコは大混乱に巻き込まれる危険性がある。

もう1つの出口はレバノンであろう。すでにレバノン北部では、ISとレバノン軍との衝突が連日のように起こっている。レバノンにとってはまさに降って湧いたような大迷惑だが、ここは15年間(1975~90年)内戦が続いてきた国だけに、レバノン軍にしろ、ヘズブラなどのミリシア(私兵)にしろ、戦闘能力はきわめて高く、ISは苦戦を覚悟せざるをえまい。

もう1つ、今後騒乱が待ち受けている国はリビアであろう。カダフィ大佐亡き後、リビアは革命に成功はしたものの、その後は国内各派の対立が激化、戦闘状態が継続しており、国家は正統政府とイスラム政府の2つに分断された状態にある。

油田は1969年にカダフィ大佐らが欧米資本から奪還。埋蔵量はアフリカ最大という。

ISはそこに入り込み、一大拠点を築こうとしているようだ。なぜなら、リビアのデルナやトリポリにISを支持する組織が存在するからだ。リビア東部のデルナにはファジュル・リビア(リビアの夜明け)組織が、ISに対してバイア(追従の宣誓)を行っているし、トリポリが拠点のアンサール・シャリーア・イスラム組織も同様、ISに対しきわめて友好的だ。ISは得意の斬首刑をすでにリビアで始めている。

そこで、ISがなぜリビアに向かっているのか、ということを考えてみる必要がある。鍵はリビアが産油国であること、国内が多くの派閥と組織により分裂状態にあること、欧米がリビアの石油資源を狙っているということだ。ISがシリアやイラクと同じように、リビアに向かっているのには、そうさせている国が存在する、と考えるほうが妥当ではないのか。その答えは、ここでは明示しないことにしておく。

(共同通信社、AP/アフロ=写真)
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