女性ならではの「悩み」を聞きだす

『柴門ふみの解剖恋愛図鑑』柴門ふみ著 毎日新聞社

タイトルを見た瞬間、「これは私に無縁の本だ」と思った人は、多いのではないか。しかも、帯にはお笑い芸人、ロンドンブーツ1号2号の田村淳が「この1冊で10年分の恋愛経験をしたも同然」と、大絶賛を送っているのだから、無縁の気持ちは一層強くなるのも分からなくもない。

しかし、書店にあまた並ぶ恋愛指南読本の類とは全く違うのが、『柴門ふみの解剖恋愛図鑑』である。著者は、タイトルでお分かりの通り、漫画家の柴門ふみ氏。『あすなろ白書』『東京ラブストーリー』など、数々の大ヒットドラマの原作となった漫画を手掛けた漫画家で、夫は同じ漫画家の弘兼憲史氏。

と、ここまで読めば、「やはり恋愛の達人が書く恋愛本じゃん」と、不満の声が聞こえてきそうだが、焦らないでほしい。本題はここからだ。

同書は、2013年1月から週刊誌『サンデー毎日』で月イチ連載で始まった企画。柴門氏が司会進行役兼インタビュアーとなり、2~4人の同業種の女性たちを相手に根掘り葉掘り聞き出し、まとめるといったもの。業種は、女性客室乗務員、デパートガール、ネイリスト、舞台女優、商社ウーマン、モデル、女性銀行員、女性システムエンジニア、新聞記者、ベンチャー企業営業女性、受付業務、理系女子、女性地方公務員、地方局女子アナ、外資系メディア女性、オネエの16種。そのバラエティー感たるや、“働く女性”といっても多岐に渡ることを改めて思い知らされる。

その職種の内容を確認し、同僚や上司の男性評、女性ならではの悩みなどを聞き出し、やがて彼女たちは恋愛事情についても赤裸々に語り出す。その間合いや聞き方など、柴門氏ならではのものがあるのだろうが、この本の“成功のカギ”は、「同業種複数人」の座談会形式という点だ。

同じ業種でありながら、会社が違えば多少ルールが違っていたりする。しかも、年齢層が違うと考え方や習慣が劇的に違っていたりする。極めてパーソナルな体験、考え方を具体的に聞き出すことによって、他の人には何が違うのかを改めてグイグイ聞き出す感じが滲み出ている。