藻の油脂含有率はの70~80%

もちろん「藻」それ自体の優位性もある。例えば、ミドリムシの油脂含有率は一般的に25%程度とされる。ところがMOIL社の藻は、油脂含有率が70~80%と極めて高い。

プラントのイメージ図。

「この藻を得たことで、プラント建設への道筋が見えたのです。いくら環境にいいと言っても、価格競争で勝てなければ市場には参入できませんから」と黒島社長。さらに同社の藻から精製したオイルは、すでにアメリカのASTM規格に合格しており、燃料としての実用に適合するお墨付きを得ている。

「それだけではありません」と、黒島社長は藻の特徴をさらに説明する。

「当社の藻は、倍加速度(藻が細胞分裂する速度)が約1.7日と、とても速いのが大きな強みなのです。プラントでは、実験室を飛び出して、大規模にこの成長効率を維持することを実証して行くつもりです」

絵図面を見せてもらうと、藻を充填したパイプを連ねた培養設備と、精製設備が併設され、どこか未来的な景色だ。しかし、いざ建設となると課題も多かった。培養池は農地でも構わないが、ジェット燃料をつくるためには水素の添加設備もいる。それは農地には建てられない上に、消防・防災の壁もある。これまで、一貫した生産設備ができなかったのは、そうした困難があるからだ。

今回のプラント建設について、同社は「藻から精製するオイルは無限です。化石燃料がいつ枯渇するかはわかりませんが、有限であることは間違いない。我々は、資源のない日本を産油国にしたいのです。そのためには、培養から燃料生産まで可能なプラントのひな形を世に示す必要がある。日本は、高い技術力がありながらもスピード感で世界に負けてきた。今回のプラント建設は、日本が勝つために先手を打ったのです」と力を込める。藻のオイルを「日本の底力」として、産業を支えていきたい考えだ。

同社では、早々に空港への燃料販売を始める計画だ。藻が浮力を得るために蓄えたオイルが、飛行機を飛ばす未来もそう遠くはない。

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