ジャパン・ウェイを支えるフィットネス

「強みを知り、強みを伸ばす」ことが、エディー流である。海外の強豪チームにはパワーやからだのサイズではかなうはずもなく、日本人の俊敏性、フィットネス、スタミナを活かした日本人らしいスタイル『ジャパン・ウェイ』を確立させようとしている。

ジャパン・ウェイとは、いろんなところからシェイプ(連動した陣形)を重ねて相手ディフェンスを崩し、トライを狙う素早い展開を意味している。安定したセットピース(スクラム、ラインアウト)をベースとし、ボールを積極的に動かしていく。つまりは『ポゼッション・ゲーム』。そのためにはスーパー・フィットネスが必要なのだ。

おのずと、練習もハードになり、合宿では午前6時からウエイトトレーニングが始まり、グラウンド練習ではみな、がんがん走り込んでいる。スタッフも世界のトップクラスをかき集めた。「勝つ可能性につながることは何でもやる」と言い切る。

「人物観察が趣味」と漏らしたことがある。「グッド・コーチはグッド・オブザーバー(観察者)」とも。選手の長所、短所を見極め、やる気を刺激する。時には選手を褒め、時には選手を追い詰める。「ハッピーにしない」。これがチーム強化の肝だそうだ。

オーストラリアのタスマニア州生まれ。父が豪州人、母は日本人。教育者からラグビーのコーチに転身し、2003年W杯で監督として豪州代表を準優勝に導き、07年W杯ではコーチとして南アフリカを優勝に輝かせた。実績は文句なしだ。

これまでと違い、今回はラグビー強国ではない日本をベスト8に引き上げるビッグ・チャレンジである。仕事の鬼。13年10月。軽い脳こうそくのため、病院に入院したことがある。

退院後の記者会見の、ジョーンズHCのコトバが忘れられない。なぜ、またラグビーの現場に復帰するのか?と聞かれた時だった。

「決まっている。アイ・ラブ・ラグビーだからだ。ワタシはラグビーをコーチすることが大好きなのです」

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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