「BtoB」の事業モデルに大きく転換

投資する事業分野は自動車関連や住宅、システム開発で、不採算として切り離してきたデジタル家電などに代わる成長分野に位置づけてきた。この3分野については、自動車関連なら「パナソニック」のロゴの下に「オートモーティブ」と小さな表記を付けるなど、同社初となる事業別のブランド戦略に踏み切り、力の入れようがうかがえる。

しかし、自動車関連、住宅関連の市場は競合するプレーヤーがひしめき合う。しかも、下請け的な要素が強く粗利も薄い。これを裏付けるように、津賀社長が「売り上げより利益を重視してきた」結果、15年3月期の売上高営業利益率は4.95%と前期の3.9%から改善した。ただ、「5%の壁」にようやく手が届いたばかりなのが現実だ。その意味で、敢えて熾烈な競争を繰り広げなければならない「レッドオーシャン」に飛び込む姿に、投資に1兆円の巨額を費やす成長戦略も霞んでみえる。

そこには、消費者向けの「BtoC」から企業向けの「BtoB」の事業モデルに大きく軸足を移し、どん底から這い上がった、成功体験に引きずられた面が見えなくもない。実際、同社が国内トップの監視カメラなどのネットワークカメラを巡っては、キヤノンが4月にスウェーデンの世界最大手企業を買収したように、レッドオーシャンには常に激しい競争が待ち受ける。

津賀社長は日頃「家電事業はわれわれのDNA」と消費者と向き合いながら成長してきた創業以来の伝統を重んじる発言を繰り返す。しかし、その意思は成長戦略には見当たらない。創業100年の節目に、“カナリア”は歌を忘れずに、確かな立ち位置を示せるだろうか。

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