2015年5月1日(金)

ナニワの至宝「ミックスジュース」の魔力

dancyu 2013年5月号

文・廣田彩香 撮影・エレファント・タカ
りんご、みかん、桃、バナナ、牛乳、砂糖と氷を一緒にミキサーにかける(スムージーなのだ!)

どの街の、どの喫茶店にもあるんちゃうの? そう言っていいほど、関西では当たり前のフルーツをミックスする“とろ甘ジュース”。ここは一つ、巡ってみましょうと、発祥の地で、「飲まなソン」な珠玉の一杯、ご紹介です。

ワンポイントより、豹や虎がでかでかと刺繍された服のほうが「ケチ臭くなくてええやん」の大阪だ。同じ値段ならオレンジジュースよりも、バナナにみかんにりんごまで、果物大恋愛(フルーツスキャンダル)しちゃっている“ミックスジュース”のほうが「儲けた気分」がしてうれしい。と、話は早い。

ミックスジュースとは、とろ~り濃厚な関西人の性根が読み解ける飲み物なのである。

千成屋珈琲店は新世界・ジャンジャン横丁入り口すぐ。キャリーバッグ片手に扉を開ける観光客も多い。もちろん目当てはミックスジュース。

発祥の店「千成屋珈琲店」は、戦後まもない創業時、バラック建ての青果店だったとか。熟しすぎた商品の果物をさてどうしたものか、大阪商人の心得“もったいない精神”が働いた。ウマいもんをいっぺんに食べたら、なおウマい! そんな口福感が客の心を掴んだ。発端はナニワイズムな“合理的オールインワン”だが、味にうるさい関西人の“出来たて至上主義”に応える飲み物であったことも愛され続ける理由。なんやいうても、重んじるは“値打ち”なんです。

現在、店を切り盛りする二代目の奥さま・垣川豊子さんも、この一杯にスウィートなメモリーを持つ。「47年前、主人との見合いの席で初めて口にしてね。未知の美味しさに驚いたのよ」

誕生から65年ほど。今もミックスジュースは、子供から大人まで、甘く唇を奪うのだ。

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廣田 彩香