社会保険料を安くするには4、5、6月の残業を減らす

さて、控除の中でも目立って高いのが厚生年金保険料と健康保険料の2つです。これらを少しでも安くする方法はないでしょうか? その可能性があるのはまず、「4、5、6月の残業代を低めに抑える」方法です。

社会保険料を決めるときは、4、5、6月の“給料”(社会保険では「報酬」といいます)の平均額が基準になります。この平均額を「月額27万~29万円は○等級」といったようにランク分けし、そのランクによって保険料が決まるというしくみです。この計算上の“給料”には、基本給のほか時間外手当、通勤手当、家族手当といった手当も含まれます。つまり、4、5、6月の残業代を減らすことで等級が下がれば、保険料も下がるというわけです。

たとえば「月額29万~31万円」の等級の人が1ランク下がって「月額27万~29万円」の等級になると、健康保険料は約1000円、厚生年金保険料は約1750円、合わせて月に約2750円下がります(40歳未満。健康保険は中小企業の人が加入する『協会けんぽ』で東京都の場合)。わずかな差でランクが変わることもあるので、できれば4、5、6月の残業は「なるべく控えめ」を心がけたいところです。

交通費が安いところに住めば社会保険料が安くなる

もう一つ、社会保険料を決めるときの“給料”に通勤手当が入っている点にも注目しましょう。つまり、交通費が高いところに住めば、通勤手当が増えてランクが上がり、社会保険料が高くなることがあるのです。通勤手当はそのまま定期代などに消えるお金で、税金もかかりません。それなのに社会保険料の計算に入っているのはちょっとヘンな気がしますが、このあたりが税金と社会保険の考え方の違いです。

「交通費は会社持ちだから高くても平気」と考えがちですが、実は社会保険料の負担が増えているかもしれません。1カ月の定期代が3~4万円もするような人なら、もし交通費の安い路線や地域に引っ越すことができれば、社会保険料のランクを下げられる可能性があります。

給与明細をじっくり見れば、せっかく働いて得たお金をもっと大切にしよう、という気になるでしょう。10月の給料からは、厚生年金保険料が上がることが決まっています。物価もジワジワ上がっているし、消費税は2017年4月に10%になる予定です。出ていくお金は増えるいっぽう! もしこの春に給料が上がったのなら、その分は貯金に回すことをおすすめします。

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。