地方のサービス付きが安いカラクリ

最近「地方の介護サービス付き高齢者向け住宅なら月十数万円の入居費で済む」という話を聞くようになった。実は、そこにも介護保険制度の矛盾を突いたカラクリがある。

1つの集合住宅に高齢者を住まわせて、そこに訪問介護を併設することで、移動の必要がなく効率的なヘルパーの派遣が可能になる。さらに、一般特定施設よりも報酬単価が高い、自宅で生活する高齢者に適用される「区分支給限度額方式」を採ることができるため、その分だけ入居費を安くすることが可能になるのだ。

有料老人ホームからサービス付き高齢者向け住宅に名称が変わるだけで月額費用が下がるというようなことがあるだろうか。どちらも社会保障制度全体としてみた場合、非効率で不公平だといわざるをえない。

本来、特養は社会福祉施設であり、要介護高齢者の住宅ではない。しかし、居住費を各特養が自由に設定できるため、一部では介護保険で決められた1日当たり1970円の基準を大幅に上回る4000円台のところもある。結果、莫大な社会保障費が投入される一方で低所得者や虐待を受けている高齢者など、本来、優先されるべき人が入りにくいなど、その役割は大きく混乱している。

活用できる財源は限られている。介護移住の前に、特養のあり方、セーフティネットとは何かを問い直すことが、必要なのではないか。

高住経ネット主宰 濱田孝一(はまだ・こういち)
1967年生まれ。旧第一勧業銀行勤務、特養ホームの介護スタッフ・マネジャーなどを経て、現在は高齢者住宅の開設・経営支援サイトの主宰者として各種コンサルなどを行っている。
(構成=伊藤博之 撮影=熊谷武二)
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