「勉強しないなら、受験するな」

「勉強しないなら働こう」

この「勉強しろと言わない」方針が、揺らいだことはありません。でも「勉強しないなら○○するな」と言ったことはあります。

長女が高3の夏、突然勉強しなくなりました。毎日毎日卓球です。まあ、ある個人的理由が彼女にあったのですが、それとこれとは話は別。もともとわが家の受験は「行きたくないなら高校も大学も行かせない」「行きたいなら行きたいとちゃんと言いましょう」からスタートしています。

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中学はあえて社会の縮図である「公立」へ通わせて修業させ、食っていける大人に育てるのが三谷家の進路戦略。(『プレジデントファミリー2015年春号』)

ですから、勉強せずに卓球ばかりしている長女に言いました。

「ちゃんと勉強しないでとりあえず受かったところに行く、は許さないよ。志望校に受かるために全力を出して取り組んだ結果なら、どこに行くのでもお金は出すけれど」
「いま勉強する気が起きないなら、まず働こう。その後で学びたくなったら、そのときにお金は出してあげるから」

つまり、「勉強しないなら受験するな」です。もちろん私は本気です。

それに対して、長女も結構真剣に考えました。「就職して、しばらく卓球三昧の生活も良いかな」と(笑)。でも翌週、私の書斎に来て言いました。「やっぱり今進学したいから、行かせてください」と。そしてまた、勉強し始めました。

▼三女の読書の楽しさは、魔法の1冊から

私がもうひとつ、子育てで気をつけていたのは「学ぶことの楽しさ」かもしれません。私自身は、最初から知ることや理解すること自体が大好きでした。子どもたちが同じとは限りませんが、そうであって欲しいなとは思っていたので、いろいろ考えました。「勉強しろ」と言わないのと同じように、「本を読め」と言わない こともそのひとつです。

長女は生来の本好きでした。ハリー・ポッター全巻を3周くらいしていました。次女は本をあんまり読みませんでしたが、リビングの壁一面を埋め尽くす私のマンガは結構読んだようでした。で、三女です。

彼女は最初、ほとんど本を読みませんでしたが、小3のとき近所の紀伊國屋書店で1冊の本に出会いました。『王さまレストラン』です。本好きの長女と一緒に立ち読みをしていて、これだ! と感じたのです。

王さまシリーズは寺村輝夫さん(2006年没)のライフワークです。1956年から40年以上にわたって31冊が刊行されました。どこかの国に住む、わがままな王さまが主人公のお話で、特に、真剣な学びや寓意があるわけではありません。でも、その強烈なわがままさと数々の失敗(と時々の成功)が楽しい、そんな本です。

三女はこれで「小さな活字がいっぱいの本」を読む楽しみを覚えました。それまでいろいろ試したけれど、最後まで読み通すことのなかった「小さい活字」の本。そういった本を読む楽しさを「王さま」は無邪気に教えてくれました。それから彼女はひたすら「王さまシリーズ」を読み続けました。

それを読み尽くす頃には「魔女さんシリーズ」「若女将は小学生シリーズ」と、その世界は次々拡がっていき、いつの間にか「年間読書1万ページ超え」の小学生に。

結局答えは、「本を好きにならせる」ではなくて、まず「好きな本を見つける」、次に「そこから芋づる方式で横展開する」方法でした。そしてその鍵は「図書館(図書室)や書店」と「Amazon(などのネット書店)」でした。そして加えるならば、親自身が楽しげに本を読む姿、なのでしょう。