そこで、次に挙げられるのが“投球フォーム説”だ。小島氏は「黒田投手や上原投手が重大な故障をしていない1つの要因として考えられるのは、投球フォームに起因します。彼らはどちらかというと、“力投”しない投球フォームなのです。わかりやすく言えば、余分な力を入れることなく、柔らかく投げているということです。松坂、藤川両投手は力投型、和田投手は、特殊なフォームだった」と分析している。

松坂や和田、藤川が怪我を発症したのが30歳を超えてからだったのに対し、ダルビッシュや田中が20代で怪我を負ったというのも、気になる点だ。怪我の年齢が若くなっているという現状も、投球フォームにあるのだろうか。

小島氏は、「剛」か「柔」であるかが重要なテーマだとこう提言する。

「ダルビッシュ投手は、高校時代も含めて、日本にいたころは『柔』らかく投げていました。一方、田中投手は力投型の投球フォームで『剛』といえました。ところが、彼らは近い時期に怪我をしました。

要因は彼らのその後のスタイルの変化にあります。ダルビッシュ投手は、アメリカに渡る1年前に、2カ月で約10キロの体重を増やし、パワーピッチングをするようになりました。それまでの『柔』の投手から『剛』に変わったのです。逆に、田中投手はアメリカに渡ってから『柔』に転換しつつあります。2学年離れている2人の怪我が重なったのは、ダルビッシュ投手のほうが『柔』の時期が長かったからだと思います。日本ハムの大谷翔平投手は高校時代まで『柔』でした。今は『剛』になったので、彼も心配です」

さらに昨今の日米で共通して話題となっているのが、ジュニア期の“登板過多説”だ。例えば、田中投手は高校時代と日本のプロ野球時代には連投・完投を多くこなし、登板過多の傾向があった。

アメリカ国内でも、ピッチャーの肘の問題が同じようにあり、ジュニア期の登板過多を問題視する声がある。だが、アメリカと日本が決定的に異なるのは、そうした問題に対し、迅速に取り組む組織の柔軟さがあることだ。事実、昨年11月、MLBと米国野球連盟は対策に乗り出した。18歳以下のアマチュアのピッチャーを対象にしたガイドライン「Pitch Smart」を作成。1日の投球数や投球数により必要となる登板後の休養日数などを示した。

日本は対策を講じられるのか。

(写真=AFLO)
【関連記事】
米国はなぜダルビッシュに46億円も払えるのか
ダルビッシュと「トミー・ジョン手術」
「巨額年棒」代理人交渉の舞台裏
『メジャーリーグここだけの話』長谷川滋利
ホラを吹け。その実現のためにのめり込め