日本の男女平等は途上国並み

マタハラNetの代表、小酒部さやかさんが米国国務省から「国際勇気ある女性賞」を受賞し、その報告とマタハラ白書の発表をかねたイベントが3月30日サイボウズ本社で開かれました。イベントを共催し、登壇したのはイクボス、経営者、イクメン代表の男性たちです。マタハラ被害者は女性ですが、これは「職場全体の問題、日本全体の問題」という意識が共有されているからでしょう。

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3月30日の受賞記念イベント

「国際勇気ある女性賞」とは日本では聞き慣れない賞ですが、その理由は小酒部さんの報告を聞いてわかりました。

なんと「主要7カ国では初の受賞」なのです。小酒部さんのほかに受賞したのはアフガニスタン、コソボ、シリアなどの女性たち。命の危険もあるような環境から受賞している人ばかりです。

「うれしいけれど、日本がこの中に並んだというのは……」と小酒部さんも複雑な表情でした。日本は人権、男女平等に関しては「発展途上国の女性たち」と同じ状況だという意味です。アメリカでマタハラが問題になったのは40年前なので、日本は40年遅れている。それをアメリカから指摘されたのです。

この問題に対して小坂部さんが初めて声をあげ、団体を立ち上げたのは2014年の7月。9カ月間でアメリカが最初に手を差し伸べてくれました。

この賞の受賞者は国務省人物交流プログラムで教育を受け、専門分野のアメリカ人と議論をかわし、より深い知識を得て帰国します。そして、社会問題を解決するミッションを授けられます。

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受賞者の皆さんとミシェル夫人

「ファザーリングジャパンもマタハラNetも、目指すのは働き方改革。マタハラが起きる原因はと米国で何回も質問され、長時間労働と性的役割分業意識の問題とこたえました」

小坂部さんは最後に群れの中で最初に荒れた海に飛び込むペンギンの写真を見せました。

「最初のペンギン……。これは勇気の象徴なんです。怖くても誰かが最初に飛び込まないとみな飢えて死んでしまう。一人ひとりが働き方の改革者になってほしい」

そこにいたのは、数カ月前に会った「被害者」としての彼女ではない。被害者だけでなく、働くすべての人のために問題を解決しようとする、勇気ある女性でした。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)

撮影=向井渉