柔軟剤の香りで瞳孔が大きく開く

調べてみれば、日本で「香り系柔軟剤」ブームが始まったのは、2008年頃からだそうで、その頃に大手3社(花王、P&G、ライオン)が相次いで新発売したという。その後、2012年には第2次ブームが訪れ、衣服を柔らかくする機能だけでなく、「香り付け専用」というカテゴリーが生まれている。

そして、現在。第3次ブームなのではないかと思うほど、柔軟剤市場は過熱している。今年に入って、売れっ子女優たちが香りのトンネルをくぐったり、いい香りを振りまいたりと柔軟剤のCMを見ない日はないほどだ。おばさんおじさんまで巻き込み、日本国民みないい香りに包まれていく。1000億円は優に超える市場らしい。

驚くべきは、その進化系柔軟剤の「効能」だ。

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柔軟剤の香りがあったほうが、「女性らしい」「エレガントな」「キレイな」といった項目で評価が向上した。

ライオンのファブリックケア研究所の調査では、柔軟剤の香りで女性の見た目の印象は変わり、「(その女性を)眺めていたい」「近づきたい」という関心度まで高まり、香りの違いによって同じ女性でも異なった印象を与えることができるという結果が出ている。

極めつけには、柔軟剤の香りがする女性を見る人の瞳孔は大きく開き、興味・関心が高まる傾向もみられたとか。もはや柔軟剤がやわらげるのは、衣服ではなく、場の空気のようである。

体臭が少ない日本人にとって、香水は香りが強すぎて敬遠されるふしがあるけれど、衣服からふわっと香ってくる柔軟剤の香りに罪はなく、女の私でも引き寄せられてしまう。満員電車に乗っていても鼻をつまむのではなく、むしろその場の雰囲気を和らげる。

香水が魅惑の香りだとしたら、柔軟剤には、安心感を与える香りの要素がある。計算高い女性ならば、それを逆手にとって、安心させて引き寄せて……という罠を巧みにしかけられるだろう。若い主婦たちの間では単品では満足できず、オリジナルな香りをつくるべく、数種を買い込み自分でブレンド、カスタマイズすることも流行っているのだという。洗濯しながら、魅惑の媚薬を調合しているのである。