失敗を恐れず成功を夢見て決断

昭和シェル石油 香藤繁常顧問

エネルギーソリューション事業の一環として、立ち上げたのがソーラーフロンティアである。太陽電池モジュールの生産および販売を目的に2006年9月に設立し、生産拠点は宮崎県内に置いた。まず2007年に年間生産量20メガワットの第1工場、2009年に60メガワット第2工場を建設。11年には1000億円という巨費を投じて900メガワットを誇る第3工場(国富工場)を稼働させている。

この投資については、私の気持ちのなかでもかなり躊躇があったことは間違いない。そこで、この分野の現状を分析してみると、主力商品となる新世代薄膜太陽電池(CIS太陽電池)の技術力には自信を持ってよさそうだった。ただし、ブランド力はほぼゼロに等しい。しかも、国内には名だたる先発メーカーがいる。そこに石油会社が参入して、はたして勝ち目があるのか。

迷った私は、日頃から尊敬している先輩経営者に相談した。その人のアドバイスは「漠然とした不安ならともかく、沈着冷静に考えて、技術力で負けないのなら勇気を出して進んだほうがいい。新たな意思決定に際しては、失敗を恐れず、成功するイメージを持って決断するんだ!」という、私にとっては非常に貴重な意見だった。千万の味方を得た思いで、心おきなく大型設備投資の意思決定できた。

生産量が20メガワットと60メガワットの工場を持っているなら、次は120メガワットと考えるのが通常かもしれない。それにもかかわらず、一気に900メガワットに挑んだのは、日本のみならず世界に対しても大きなインパクトを与えるからだ。トップグループに追いつくには「ソーラーフロンティアというのは、一体どんな会社だ?」と思われないとだめだ。中途半端では誰も注目してくれない。