なぜ一流の人は、多忙を極めても余裕があるのか。その違いは、脳と心の使い方にあった。精神科医と心理学のプロが教える。

無理な依頼はスルー、6時間睡眠を確保

クライアント回りや会議の資料づくりなどで深夜まで残業した結果、次の日はヘトヘト……という経験を持つ人は多いだろう。本来ならプレゼンなどの大事な日は、どんなに忙しくても体調を万全にしたいものだ。

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「人間のストレス反応のメカ二ズム」(出所=『「器が小さい人」にならないための50の行動』西多昌規著)

「重要なのは睡眠時間の確保。これに尽きます」と精神科医の西多昌規さん、心理学ジャーナリストの佐々木正悟さんともに口を揃える。寝不足は疲れが取れないばかりか、それがストレスとなって仕事のパフォーマンスを低下させるというのである。

睡眠とパフォーマンスとの関係を西多さんはこう説明する。

「寝不足になると、脳と体は極度のストレス状態にさらされます。具体的に言うなら、寝不足状態では怒りや恐怖の発生源である脳の扁桃体が活性化する。それにより脳からストレス刺激が送られて、脳の視床下部と下垂体を伝って、副腎に含まれる副腎皮質からコルチゾルというストレスホルモンが分泌されるのです。このコルチゾルが過剰になると、脳の神経細胞にダメージを与える。そして、判断や問題解決に重要な前頭前野の働きまで低下させてしまうのです。かつて短時間睡眠法がもてはやされましたが、今の時代、寝る時間を削って仕事をしようと考える時点ですでに敗北者です」