日本経済がアメリカ以上に低迷する理由は何か

麻生総理は「日本は不況から立ち直る最初の国になる」といいました。私もぜひそうなってほしいと思いますが、実態はむしろ逆です。

欧米でサブプライム・ローン問題が顕在化したのは07年ですが、日本経済はそれ以前から悪化していました。07年、米国の株価は6%上昇しましたが、日本の株価は反対に11%下がりました。08年は米国株が36%下落しましたが、日本株はそれ以上の42%も下がりました。金融危機の本場よりも日本のほうで下落幅が大きいのです。日本の金融機関はバランスシートが傷んでいないのに、なぜこんなことが起きるのでしょうか。

あえて要因を2つ挙げます。一つは、改革をしなくなったことです。この2年間で明らかに改革の勢いがなくなりました。改革をしなくなると日本経済は強くなりません。つまり期待成長率が大幅に下がったということです。

小泉政権末期のアンケートでは、多くの企業経営者が日本の経済は3%近く成長できると考えていました。しかし改革が鈍化したことで、現在の期待成長率は1%くらいになっています。これだけ見通しが違うと、企業の設備投資計画も家計の支出も下方修正をするはずです。頼みにしていた外需も激減してしまった。それが日本の現状だと思います。

処方箋は「改革を続ける」ことです。たとえば、これとはまったく逆の1年を私たちは経験しています。郵政解散選挙があった05年、日本の株価は42%上昇しました。技術と資本と労働力と人材を持つ日本経済は、そもそも強いはずなのです。

05年春に私は郵政民営化担当大臣として民営化法案を国会に提出しました。そして解散総選挙を経て、秋の臨時国会で民営化法案が通り、その勢いで05年末には日本政策投資銀行と商工中金という政府系金融機関も完全民営化すると閣議決定しました。あの05年の1年、世界の投資家は「これで日本経済はほんとうに活性化するぞ」と思った。日本の国民もそう思ったのです。

しかし世界は激しく競争していますから、政治が動かず、改革が進まないとなると、日本の株価は米国株よりも下がってしまう。これが日本経済の置かれている構図だと思います。

もう一つの要因は「コンプライアンス不況」です。コンプライアンス(法令遵守)とか国民の安全・安心という、むしろ倫理に属する自明のものに対して、行きすぎた規制が行われているのです。それによって、明らかに民間の経済活動が萎縮しています。

代表的なのは建築基準法の改正です。姉歯事件を受けて、構造計算のチェックを二重にした。しかしチェックする人が足りないので、建築申請に対してなかなか認可が下りない。その結果、08年の住宅投資はマイナス10%になったのです。何でもかんでも規制していいということはありません。コストとベネフィットとを勘案して決めるのが当然です。(文中敬称略)

(面澤淳市=構成 尾崎三朗=撮影 AP Image=写真)