強敵相手に、張り合いのある仕事

ジャガーでは営業を担当したかったのですが、「女性がセールスしたら何が起きるかわからない」と反対され、もう辞めようかと思っていた頃、会社から面白い仕事を与えられました。ジャガーグッズの企画です。当時、ジャガーのロゴの入ったゴルフバッグやタオルなどを本国のイギリスで製作していて、それを日本に輸入していたのですが、関税が高いので日本で作りたいと会社が考えていました。本国から商品を取り寄せて品質を確認し、それと同じものをデザインし発注します。これがとても楽しかったんです。

ところが、当時ジャガージャパンは西武百貨店が出資していた会社で、西武百貨店の関連会社が事業を丸ごと担当することになりました。転職への思いが一気に高まりましたね。

それをきっかけに92年にアルダスというIT企業に転職します。きっかけはアルダスを立ち上げた手嶋雅夫さんとの出会いでした。手嶋さんはジャガージャパン時代に担当したお客様です。ITといってもまだインターネットが普及する前で、PCがDOS/Vで、メディアが5インチフロッピーの時代です。

アルダスの主力製品だった「PageMaker(ページメーカー)」というDTPソフトやデザインソフトの「FreeHand(フリーハンド)」などの販売促進を担当しました。家電量販店に行って店員さんとやり取りし、製品のカタログを置き、土日は来店客に説明する仕事です。

今改めてアルダスに移ってよかったと思うのは、強い競合がいる環境のなかで勝つための方法を考えられたことです。ページメーカーには、競合商品としてクオーク社の「QuarkExpress(クオークエクスプレス)」、フリーハンドにはアドビシステムズの「Illustrator(イラストレーター)」が立ちはだかっていました。

使いやすさで言えばクオークかなと思いながら、ページメーカーのよさを紹介するなかで、説得力のある伝え方を身につけられたと思います。最初から強い会社にいたら勝ち戦しか知らないから、2番手から1番をめざす戦い方は身につかなかったでしょう。結局、アルダスはアドビシステムズに買収され、それを機に私も退職します。その後、マクロメディアを経て、ワイノットの日本法人の立ち上げに関わっていくことになります。

Top communication=構成 的野弘路=撮影