甲南大学特別客員教授 加護野忠男氏が解説

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買収した2006年から純増数は右肩上がり

買収先が業績を急拡大させている場合には、無理にやり方を変えるべきではないだろう。しかし企業買収は「救済」の意味合いをもつことが多い。

買収先の企業文化をどれだけ尊重すればいいのか――。考えるべきは、買収・合併のシナジーをどうすれば最大化できるか、であり、そのための戦略を再構築することだ。企業文化は戦略の後に出てくる問題だろう。たとえば2002年に日本鋼管と川崎製鉄の経営統合で発足したJFEは、売上高経常利益率で、鉄鋼業平均約2.5%に対し15%という極めて高い目標を掲げ、「仕事の棚卸し」を行った。「たすきがけ人事」とは無縁の組織改革だった。

甲南大学特別客員教授 加護野忠男氏

ボーダフォンの買収も、組織文化より戦略の変更を軸に考えるべきだ。ソフトバンクは、地方での回線品質の弱さをカバーするため都市部にターゲットを絞り、iPhone投入などでシェア拡大を図った。ドコモという巨人と戦うには文化では勝てない。賢明な判断だったといえる。

●正解【B】――相手を尊重しすぎると、シナジーを生むまでに時間がかかりすぎる

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。

(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成 プレジデント編集部=撮影(加護野氏))
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