「月に1つの新商品発売」が同社の目標であるという。商品開発は、小さな雑貨といえども手間も時間もかかる。ほかに類のないアイデア商品となればなおさらだが、同社にはその目標を可能にするふたつの仕掛けがある。

ひとつは「新商品企画提案制度」。アイデアを全従業員から募集しているのだ。これには報奨金も設けられている。提案書を提出すれば1ポイントがつき、50円がもらえる。アイデアの出来によって10ポイント、25ポイント、50ポイントとランクがあり、ポイント分の報奨金は1年分まとめて支払われる。

提案書の体裁は社員によって様々だ。

所定の提案用紙を見ると、きちんと図面にしたものもあれば、商品のねらいと特徴を箇条書きにしたものもある。体裁は問わない。「自分がほしいと思うものを、できるだけ具体的に書いてほしい」と原さんは常に言っている。140人の従業員から、年間に上がってくる提案は200件にのぼる。

それら提案は、月に1度の商品企画会議にかけられるが、その際に使われるテレビ会議システムがもうひとつの仕掛けだ。本社、支社、工場など同社の4拠点をつなぎ、リアルタイムで顔を見合わせて対話できる。開発責任者の立場にある原さんが、どれを商品化するかについて頭越しに採択することはない。開発に回すのは、会議メンバーの大方がよいと認めたものである。

「何が売れるかは、雲をつかむような話。経験値はそう当てにはなりません。営業、開発、生産にかかわる会議メンバーが企画をどう感じるか、その反応を見て判断することが大事」(原さん)

テレビ会議のシステムは、打ち合わせなどにも頻繁に使われる。商品の仕様やパッケージデザインの細かな相談なども、現物を映像で確認しながら進められる。開発中に起こる様々な課題も、その都度スピーディーに解決できる。このリアルタイムの意思疎通が、商品のアイデアを揉んでゆく生命線だ。だから本社内でも、営業部門と開発部門は同じフロアで背中合わせ。いつでも、振り向くだけで声を掛け合える。

報奨金付きの企画提案制度と、部署間の風通しのよさが、翌月にアイデア商品を生み出す基盤と環境を形づくっているのである。