なぜ日本では社外役員が増えないか

【田原】規制改革以外についても聞きたい。コーポレートガバナンスについてはどうお考えですか。産業競争力会議で一部上場企業に社外役員を入れることを法律で決めようとしたけど、結局、決まらなかった。

【宮内】経団連が「社外役員を法的に強制するな」と強く反対しましたからね。そのことを経団連に聞くのが間違っています。コーポレートガバナンスは経営者を駆り立てるシステムですから、経営者に聞けば、「いや、いまのままがいい」というに決まっています。ガバナンスをもっとも必要とするのは投資家ですから、聞くならそっちのほうがよかった。

【田原】アメリカは半分以上が社外役員だから、ROEの低い経営しかできない経営者はクビになります。一方、日本は経営者をクビにしたくてもできませんね。

【宮内】日本はアメリカのように決を採って決める文化ではないから、社外役員が数人いて、長老のような人が強く主張すれば、社長を代えることも可能でしょう。その意味で必ずしも過半数でなくてもいいのかもしれませんが、1人入れるか入れないかで騒動になっているいまの状況は論外ですね。

【田原】聞きにくいことを聞きます。オリックスで宮内さんにものをいえる役員はいないんじゃないですか。

【宮内】いないですね(笑)。でも、クビの心配がないわけではない。当社は委員会設置会社ですから。

【田原】委員会設置会社? どういうことですか。

【宮内】委員会設置会社は、監査役設置会社と違って監査役がいません。かわりに指名委員会、報酬委員会、監査委員会という3つの委員会を持つ必要があり、これらの委員会はおのおの独立していて決定権を持っています。指名委員会は役員の任免を全部決めることができ、報酬委員会は私の給料を決められます。また、監査委員会は、独立して監査をします。問題は委員会のメンバーですが、当社は3つの委員会とも全員が社外役員で、私は入っていない。ですから社外役員が「君はいらない」といったら、私はクビです。