新卒一括採用は20世紀のもの

田原総一朗氏

【田原】アメリカやヨーロッパにも解雇規定はあって、解雇ができる。なぜ日本にはなかったのですか。

【宮内】戦後は「総資本」対「総労働」という中で労働組合の力が強くて、正規雇用ががっちり守られてきましたからね。しかし、いまや組合の組織率は17%。組合は総労働でも何でもない。労働者の40%が非正規ですし、当時とは状況が違います。

【田原】ただ、いま雇用制度に手をつけると、従業員が悪い条件で解雇されるのではないかという危惧もある。

【宮内】一生懸命働いていれば、解雇規定など関係なく、いままでどおりやれるはずです。ところが特権にあぐらをかく人がいるから、非正規が増えて不公平が生まれる。これを正すには、懸命に働いていない人に「ごくろうさまでした」といわないといけない。それで公平になっていくんじゃないですか。

【田原】海外は「この仕事をやりたい」といって「就職」しますが、日本は「この会社に入りたい」と考えて「就社」するという指摘もあります。

【宮内】そうした風潮は変えるべきでしょう。新卒の一括採用は、20世紀の大量生産の時代には効果的なやり方だったかもしれません。しかし21世紀は知識集約社会であり、新しいものをつくっていくことでしか生きられない。そのためには、日本人も外国人も含めて、さまざまな才能や経験を持った人に来てもらう必要があります。そう考えると、みんな新卒で採用するのはズレていますし、毎春に一度行われる入社式というのも、私には違和感があります。

【田原】そうすると、オリックスは新卒が少ない?

【宮内】新卒より、中途で入ってくる人のほうが圧倒的に多いです。

【田原】みんながオリックスのようにやると、新卒の失業率が高くなりませんか。実際、アメリカやヨーロッパはそうなっている。

【宮内】その可能性はあるでしょう。「君の専門は何か」と質問して、「部活を頑張りました」「根性なら負けません」というような学生は雇っても仕方がないですからね。いずれそのような時代になると思います。