そのためにはとにかく、人に会う。それも自分と違う世界の人ほど、たくさんのヒントがもらえます。雑誌編集者、コンサルタント、ITクリエーターなど、ふだん仕事では縁のない人たちからの情報はすべてが新鮮です。

そしてその場で「おもしろい」「ビジネスに活かせそうだ」というヒントを得たら、帰りの車中でスマートフォンを起動させ、メモ機能に打ち込んでおきます。紙のメモを取り出すよりも手軽だからです。それこそワクワクするようなネタが、ずいぶんたまりました。

問題は、そのネタをスピーディに事業化できるかということです。

とりわけ新しい事業は、担当者が納得して本気にならなければ成功しません。だから新規事業のヒントを得たときは、担当部署に「命じる」のではなく「提案」することにしているのですが、営業本部や婦人統括部などのラインに提案しても、日常業務で手いっぱいのこともあり、思うようには動いてくれないというもどかしさがありました。

競合相手は百貨店だけではなく、意思決定の早いベンチャー企業などさまざまです。世の中の動向に目を向け、これと思った事業を機動的に立ち上げる。そのスピード感が従来の百貨店には欠けていたのです。

13年4月、経営戦略本部に新規事業開発を担当する「マーケット・開発部」を新設しました。おかげで事業開発に機動性が出てきましたが、まだまだ足りません。百貨店業の未来へ向けて、新しいことに素早く貪欲に取り組む社風をつくりあげたいと思っています。

時間管理3カ条
1. 目先より20年先が大事と心得る
2. 思いついたらスマホにメモ
3. 移動時間に進捗チェック
●大西社長のある1日

06:00 起床
08:30 出社
09:00 省庁関係者と面会
10:00 店内巡回
10:30 開店の挨拶
11:00 IT関連会社幹部と面会
11:30 経済誌取材
12:00 海外取引先とのランチミーティング
13:30 地方の行政トップと面会
14:30 社内打ち合わせ
15:00 経営ミーティング
16:00 営業ミーティング
18:00 レセプション出席
20:30 通信関連のトップ・幹部との情報交換会
23:30 帰宅
01:00 就寝

三越伊勢丹HD社長 大西 洋
1955年、東京都生まれ。麻布高校、慶應義塾大学商学部卒。79年、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。常務執行役員などを経て2009年、伊勢丹社長。11年、三越伊勢丹社長。三越伊勢丹ホールディングスでは10年に取締役、12年2月から社長。紳士服市場で圧倒的な存在感を誇る伊勢丹新宿本店メンズ館を03年に立ち上げた「創業メンバー」の一人。
(山口雅之=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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