IT・ネットマーケティング領域の専門部隊として、2012年のリクルート分社化により設立されたリクルートテクノロジーズ。リクルートグループの提供するサービスをシステム開発や基盤運用、Webマーケティング戦略といったIT領域から牽引している同社では、設立以来、力を入れている取り組みがある。事業ニーズに適応した「開発体制の強化」だ。

リリース後も、スピーディに進化できる開発体制

「リクルートテクノロジーズでは、社内での開発体制の1つとして『スクラム開発』を重点テーマに掲げています」と語るのは、同社の執行役員を務める志田一茂氏。「スクラム開発」とは、「アジャイル(Agile)」と呼ばれるソフトウェア開発手法のひとつであり、北米のIT企業などで主流となっているもの(出典:VERSION ONE社 “State of Agile”  conducted between August 4th and October 16th, 2013.)。その開発手法を根付かせ、それによりビジネス進化を成し遂げようとしているのだ。

リクルートテクノロジーズが実践するスクラム開発とは、具体的にどういったものなのだろうか。また、それを導入する狙いはどこにあるだろうか。その背景を見ていきたい。

写真を拡大
出典:日経ビジネス2014/04/07号

2000年以降、IT技術の伸長により、それまで情報誌として「紙」で提供していたものが、ウェブサイトやスマートフォン上のアプリで発信される機会も格段に増えた。その中で、「メディアや新機能をリリースするまでの開発スピードがよりビジネス上重要となった」と志田氏はいう 。

「情報誌などの紙媒体は、100%完璧な品質でリリースすべきもの。出した時点で失敗することは許されません。そのため、長期間・高コストでじっくり検討・開発するのが主流でした。一方、ウェブサイトは参入障壁が低く、類似サイトが多数生まれてしまうのが特徴。そのため、紙媒体に比べると『短期間でいかに早くリリースできるか』が価値となっていきました」

このような背景から、リクルートテクノロジーズに分社化する以前のIT組織においても、サービス立ち上げまでのスピードに特化した開発体制を実現しようと、リクルート向けの独自アジャイルスキーム構築が試行錯誤されてきたという。しかし、納期短縮は実現できたものの品質上の課題や事業企画者との役割定義など、この開発体制をさらに良くするための課題も見えてきた。

「新規サービスを一気に開発する『0→1』の体制はできていたのですが、作られたものを軌道に乗せる『1→10』の作業は、もっと充実させられる見込みがありました。たとえば、ヒットコンテンツをさらに進化させたり、あるいは使いにくいサービスを改善したり。リリースまでのスピードだけでなく、リリース後も、スピードを重視してサイトを改善していくことが求められたんです」

その必要性に直面したのが、スマートフォンの登場だ。2010年以降、急速に開発ニーズが高まったスマートデバイスのアプリ開発においては、定期的にOSのアップデートが行われ、そこで使用されるアプリもすぐにシステム修正をしなければならない。社内にて急速に開発ニーズの高まったスマートデバイスアプリの短納期・大量開発の実現に向け、志田氏が中心となって開発チームを立ち上げ、約6か月で新規26アプリ、127リリースを実現。社外に外注していた頃よりも短期間でかつ大幅な品質向上を達成するなど大きな成果を上げた。そこで得たファインディングをもとに、現在、エンタープライズ領域への適用に挑戦しているという。そこでキーとなるのが「スクラム開発」だ。