アルバイト出身社長で危機克服に挑む

居酒屋不況に苦しむ大手居酒屋チェーン店。

総花的に豊富なメニューを揃える旧来の居酒屋モデルが飽きられ、魚料理や肉料理に絞った特徴のある専門店に客を奪われたのも痛手だった。この点は、大型小売店でかつては百貨店、足元で総合スーパーから客が専門店に流れた現象と似通っている。

居酒屋チェーンながらコロワイドは、12年に焼き肉店「牛角」をチェーン展開するレインズインターナショナル、さらに回転寿司「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトホールディングスを14年12月に買収するなど、矢継ぎ早のM&A(企業の合併・買収)により総合外食路線に大きく軸足を移した。これは、不況風の吹く居酒屋から脱皮する狙いだった。

一方、上場以来の非常事態に陥ったワタミは、3月1日付で清水邦晃常務が社長に就く人事刷新で危機乗り切りに臨む。清水氏はアルバイト出身で、カリスマ創業者の渡邉美樹参院議員の信頼も厚い生え抜きの「たたき上げ」で、引責辞任した桑原豊前社長が敷いた路線を完全に軌道修正し、10年ぶりの値下げに踏み切る。まさに原点回帰で立て直しに打って出る。

しかし、ファミリーレストランや牛丼チェーンといった「食」がメーンの外食チェーンに加え、最近は一部のコンビニエンスストアまでも「ちょい飲み」市場に参入し、「ちょっと一杯」の客層を急速につかみつつある。同社に限らず、居酒屋チェーンが遠のいた客足を取り戻すのは容易でなく、異業態による領域侵犯は多重苦に苦しむ居酒屋をさらに苦境に追い込みかねない。その姿は構造不況業種そのものであり、居酒屋チェーンはまさに出口の見えない袋小路に迷い込んでしまった。

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