土地活用の新たな選択肢として「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」を選ぶオーナーが増えている。これから経営を始めるための心得を、川原経営総合センターの田中律子氏に聞いた。

心得1
補助金を活用し潜在ニーズを喚起する


有料老人ホームなどと混同されやすいが、サ高住は高齢者の安全などに配慮した「住宅」のことだ。建物面ではバリアフリー構造や原則25平方メートル以上の居室面積の確保、サービス面では安否確認や生活相談の提供など、一定の基準を満たした物件が「サ高住」として登録できる。

高齢化のスピードに対して、お年寄りが安心して暮らせる住環境の整備は道半ばだ。国土交通省は高齢者の住まいのバリアフリー化率を2020年までに75%へ引き上げる目標を掲げる。そんななか創設されたのが、サ高住制度である。

介護事業に詳しい経営コンサルタントの田中律子氏は「2011年の制度開始以来、順調に整備が進み、2015年1月時点の登録戸数は約17万戸に上ります。これはひとえに、補助金などの政策誘導が奏功した結果でしょう」と分析する。

国が推進するサ高住の建設には補助金や税制面でさまざまな支援メニューが用意されている。「サ高住を新築する場合、100万円を上限として、国から1戸あたり建設費の10分の1、改修でも費用の3分の1が補助金として交付されます。また、所得税や法人税についても、5年間の割増償却を受けられるなどの利点があります」。こうした財政支援が土地活用を考えるオーナーの取り組みを後押ししている。

「2015年度は、これまでどおり補助金の継続が決定しています。ただし介護関連の事業計画は3年ごとに見直されるケースが多いため、今後の動向には注意が必要です」

さらに田中氏はサ高住の普及を下支えしている要因として「住み慣れた地域で、一人でも安心して暮らせる場所が欲しいという高齢者の声が想像以上に強かった」と指摘する。

「家庭の介護力が低下する中で、『家族の世話になるより、自立して過ごしたい』という考えが強まっています。サ高住の建設がそうした潜在ニーズを喚起した側面もあり、今後も需要は根強いと見ています」