人よりも速く走りたい!

ちなみに、Tカードと一体型の図書カードでセルフカウンター(自動貸出機)を使うと、Tポイントが1日に3ポイントたまる。セルフカウンターの利用促進は図書館司書の業務効率化に貢献する。その「お礼」ポイントなのだ。こうした工夫によって、図書館の運営経費はリニューアル前より1割以上削減されている。

「最初の企画にこだわるのではなく、動きながら最適を目指す態度が大事です。その場その場の最適解の積み重ねが、全体としていいものにつながります。今でも修正を続けていますよ。シーリングファン(天井扇)や水飲み場を設置するとかね。日々、よくなっている変化を体感できる図書館です」

現在、樋渡氏は次なる「企画と実行」に邁進中だ。武雄市図書館と金沢21世紀美術館(金沢市)、旭山動物園(北海道旭川市)の3館によるパートナーシップ協定を打ち出した。

「図書館同士の提携ではない、という意外性が面白いでしょう。僕は(旭山動物園の)ペンギンを武雄に連れてこい! なんて勝手なことを言っているだけですけど(笑)。1年で3館すべてを訪ねた人にはすばらしいプレゼントを差し上げます。プレゼントの中身は3館それぞれ違いますから、『3周』する人が出てくるかもしれません。いや、きっと出てきます。その人にはもっと凄い特別プレゼントを用意しますよ」

3館提携は早くも話題を集めている。斬新なアイデアですねと感動を伝えたら、樋渡氏は軽々とかわした。

「いや、単なるマネですよ。金沢21世紀美術館と森美術館(東京都港区)、ベネッセアートサイト直島(香川県・直島町)の3館を巡るパスポートがあると聞き、遠く離れた美術館が提携するなんて面白いなと思いました。僕の信条はTTP(徹底的にパクる)です。修正はしますが、反省も分析もしません。気分が暗くなるだけですから。ただ、人よりも速く走りたい」

慣習に囚われず、「いいもの」のためには企画・実行・修正をスピーディに推進する樋渡氏。1年と待たずに、武雄市図書館で泳ぐペンギンを見られるかもしれない。

(近藤さくら=撮影)
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