最初から経営者になる気でいけ

リーダーになるのはそう簡単ではありません。

志賀副会長の講演に聞き入る20代30代の若手たち。机には有田みかんのジュース「味一しぼり」や銘菓「かげろう」「柚子もなか」。和歌山県出身者にはたまらないおやつだ。

リーダーは経営に明るく、意思決定が迅速で、部下に明確なビジョンを示すことができる人でなければなりません。ところが日本企業では、同じ部署の中で昇格していき、最終的に社長になる人が多いため、中には財務諸表が満足に読めないケースもあります。

日産CEOのカルロス・ゴーンは30歳でブラジル・ミシュランの社長に就いていますし、フォードCEOのマーク・フィールズさんは38歳のときにマツダの社長になりました。彼らは“経営者”が仕事なのです。日本のビジネスマンも最初から経営者になるつもりで、若いときから経営を勉強する必要があると思います。

そしてリーダーになったら、チームの力を最大限引き出さなければなりません。管理職になって自分が一番仕事をしている人はリーダーとは呼べません。チームが持つ100の力を120の力にできる人がリーダーです。そのためには、部下を「あの人のために頑張りたい」という気持ちにさせることがポイントです。では、どうしたらそんなリーダーになれるのか。

逃げないことです。仕事をしていると逃げたい場面が必ずあります。その気持ちを押さえ、苦労するとわかっても踏み込むのです。

1998年、日産が存亡の危機に立たされたとき、経営企画の仕事をしていた私はルノーとの提携交渉を極秘に進めていました。わずか3カ月で話をまとめなくてはならず、夜行でパリに飛び、その日の夜行で東京に帰る、夜も寝ずに仕事をする、そんな日々が続きました。仕事人生一番の修羅場でしたが、ここが勝負どころだと心得ていました。

幸いルノーからゴーンを招へいでき、日産はリバイバルプランの下、V字回復を果たします。しかしリバイバルプランは厳しいものでした。例えば、生産能力の半分しか稼働していない国内の工場は、どれかを閉鎖しなければならないのは誰の目にも明らかでした。しかし日本人にはできなかった。ゴーンは村山工場の閉鎖を決断します。

何事も逃げていては解決しません。真実を見ることが大事です。これは、リーダーに不可欠な姿勢といえるでしょう。