ビジネスで求められる能力は違う

グローバル素養は今、企業が最も求めている要素の一つかもしれない。一言で言えば海外で活躍してくれる人材だが、その内容は業種や職種によっても異なるし、企業がどのような活躍シーンを描いているかでも違う。

総合商社の人事担当者は「よく自分はブラジルのビジネスなら誰にも負けないし、人脈も豊富だと自慢する人がいるが、それは昔活躍した人。今はブラジルやアメリカ、アジアと国境を越えてビジネスがつながっている。どんな国・地域に行っても商談をまとめてくるタフネゴシエイターが求められている」と言う。

では、海外で活躍するタフネゴシエイターの素養とは何だろうか。石油業界の人事担当者は「語学力や海外経験があるから活躍できるとは限らない。実際にTOEICの点数が500点しかない駐在員がアメリカにいるが、なぜか彼は大きな商談を次々にまとめている。タフネゴシエイターの素養として、物怖じしないコミュニケーション力とどこにでも飛び込んでいける度胸だと思う。面接でもその点を重視している」と語る。

一方、現地に生産・販売拠点を構える製造業などの場合は、現地の社員をマネジメントできるリーダー人材候補を採用したいという思いがあるようだ。海外で活躍するリーダー人材候補を採用している化粧品会社の人事担当者は、リーダーシップ力に加えて「TOEICなどの英語力の点数が高くなくても、様々な国・人種の考え方を受け入れ、融合していけるセンスやスキルを持つ人が欲しい。そのため日本人でも、海外の大学に留学していた人、幼少時代から海外に住んでいた人、日本の大学で留学生の受入係をやっていたという経験などいろんな異文化体験の中身を聞いて見極めている」と語る。

もちろん語学力があるにこしたことはないが、それ以上に求められるのは現地に行っても仕事ができるかどうかだ。エンジニアリング会社の人事担当者は「TOEICが800点以上で、海外ならどこにでも行きますという学生が多いが、ふだんの生活ぶりを聞くと、研究室以外にあまり外に出たことがない学生も多い。本当にアジアの山奥や中東に行って相手と交渉するなどハードワークに耐えられるのか。行ってもすぐにメンタル不調になるのではないかと思うタイプは極力避けている」と語る。

企業が求めるポテンシャルは共通する要素は多いが、業種・企業の社風やビジネスによって求める能力は微妙に違うものだ。その点をしっかりと研究することをお勧めしたい。

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