地方では企業オーナーに病院経営者も交じる

オーナー経営者の命運は企業の盛衰とともにある。業績を伸ばした人が富を増やすのは当たり前。興味深いのは、その関係が医業においても見られるようになってきた、ということだ。宮本氏が続ける。

「かつて開業医であることは、自動的にある程度以上の資産家であることを意味しました。しかし病院数の増加や国民医療費の抑制が政策課題になるなかで、最近は開業医イコール資産家ではなくなっています。収入に格差もつくようになっており、それは地方で顕著です。先端的な医療技術や設備を導入している病院で成功しているところは、ますます裕福になっています」

森教授も「医学部や医大が少ない県、具体的には2つ未満のところほど開業医がお金持ち」という。さらに、診療科によっても違いが出ると指摘する。

「高額納税者名簿で調べると、04年までは内科の開業医が圧倒的なシェアを得ていました。しかしその後は、内科や外科と比べ『マイナー科』といわれた眼科や美容外科、皮膚科、内科のなかでも糖尿病に特化した医師が所得を伸ばしました」

少子高齢化社会において、患者が増えたり高度治療の需要が高まったりしたことが背景にある。また、治療技術の進歩も一因だ。

「かつて白内障は1泊2日の手術が必要でしたが、15分の治療ですむようになりました。それでも診療報酬はしばらくは変わらない。だから一時期は『眼科御殿』があちこちに建ちました」(森氏)

【アドバイザー】
甲南大学 経済学部教授 森 剛志(もり・たけし)
京都大学大学院博士課程修了(博士号取得)。研究分野は家計経済、経済格差。著書に『新・日本のお金持ち研究』などがある。
野村総合研究所 上席コンサルタント 宮本弘之(みやもと・ひろゆき)
東京工業大学大学院理工学研究科修了。金融コンサルティング部長。著書に『プライベートバンキング戦略』(米村氏との共著)などがある。
(武内正樹、永井 浩=撮影)
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